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– 動脈系 –

 

脳血管の解剖 - 動脈系

 

頭部の動脈の解剖です。脳の病気、特に脳血管障害(脳梗塞脳出血くも膜下出血)を勉強するときには欠かせないお話です。

 

脳血管造影(脳アンギオ)
アンギオIC正面

頭部を正面から見たところ(前方循環)

 

アンギオIC側面

頭部を側面から見たところ(前方循環)

 

アンギオVA正面

頭部を斜め上から見たところ(後方循環)

 

アンギオVA側面

頭部を側面から見たところ(後方循環)

 

 

また、下にCT、MRIによる血管系の解剖を載せていますので、ご参照ください。

 

脳を潅流する動脈には、内頚動脈からの前方循環系と、椎骨動脈からの後方循環系があります。

 

 

前方循環系

 

前方循環系には内頚動脈、前大脳動脈、中大脳動脈とその分枝血管が含まれ、主に前頭葉、側頭葉と頭頂葉の大部分、大脳基底核などに血液を送ります。

 

内頚動脈からは、頭蓋内に入ってすぐに眼動脈が分岐し、その後に後交通動脈前脈絡叢動脈が分岐します。そして、前大脳動脈中大脳動脈に分かれます。その他、小さな血管が下垂体や周辺組織に出ています。内頚動脈は左右にありますが、それぞれが脳の血流の40%程度を担っている重要な血管です。
それぞれの血管の分岐部は、脳動脈瘤の好発部位ですが、特に重要なのが、後交通動脈の分岐部です。

 

左右の前大脳動脈は、内頚動脈から分かれた後、正中に寄ってきて、左右の大脳の間を並走します。脳梁に乗るようにして、脳を前方から上方、そして後方へと回っていきます。そして、途中に多数の枝を出して、主に正中の前方の脳の血流に関与します。
左右の前大脳動脈が内頚動脈から枝分かれして正中部に寄ってきて、近接するところで、左右の前大脳動脈を結ぶ前交通動脈という血管があるのですが、この血管周囲は脳動脈瘤がとてもできやすい場所の一つです。
前大脳動脈の血流障害では、下肢の麻痺が主な症状です。その他、前交通動脈近辺の細い動脈の障害では、記憶障害や認知機能障害などが出ます。

 

左右の中大脳動脈は、シルビウス裂(前頭葉と側頭葉の間の亀裂)の中を外に向かって走行します。この間、穿通枝と呼ばれる細い血管を多数出します。この穿通枝のうち、外側から出る、外側レンズ核線条体動脈と呼ばれる血管は、脳梗塞や脳出血(被殻出血)において重要な血管です。また、この部位は動脈硬化性の狭窄が生じやすく、しばしばアテローム硬化性の大きな脳梗塞の原因になったり、分枝した穿通枝の障害でによりラクナ梗塞の原因になったりします。
外側表面近くに到達すると、中大脳動脈が2本に分かれます。ここも動脈瘤ができやすい場所の一つです。2本に分かれた中大脳動脈は、シルビウス裂の中を走行しつつ多数の枝を脳表に出します。側頭葉や前頭葉、頭頂葉など、大脳の外側半分の血流に関与、とても重要な血管です。

 

 

後方循環系

 

後方循環系には椎骨動脈、脳底動脈、後下小脳動脈、前下小脳動脈、上小脳動脈、後大脳動脈などが含まれ、主に脳幹、小脳、後頭葉、視床、及び側頭葉と頭頂葉の一部へ血液を送ります。

 

左右の椎骨動脈は、背骨(脊椎、椎骨)の中を通りつつ、頭蓋内に入ってきます。頭蓋内に入るとまもなく、前脊髄動脈(脊髄の栄養血管の一つ)や後下小脳動脈を出してから、合流します。合流した血管は、脳底動脈と呼ばれます。脳底動脈からは前下小脳動脈や、多数の脳幹への小さな穿通枝を出します。そして、末梢で4本の血管に分かれます。左右の上小脳動脈後大脳動脈です。

 

椎骨動脈は、しばしば動脈解離を起こして、脳梗塞やくも膜下出血という病気の原因になります(椎骨脳底動脈解離)。椎骨動脈から出た後下小脳動脈が閉塞すると、めまいや嘔吐、嚥下障害、感覚障害などを起こし、Wallenberg症候群と呼ばれ有名です。
椎骨動脈は左右にあるので、1本が閉塞しても何とかなる可能性がありますが、脳底動脈は1本のみなので、閉塞すると大変な事態が予測されます。
脳底動脈から出た3本の小脳動脈は、それぞれ小脳の下面・外側面・上面の潅流を担っています。
後大脳動脈は脳幹の周りを回ってから、主に大脳の後方の内側面の血流に関与し、後頭葉では視野に関わる部位の血流を担っています。

 

 

頭蓋外の頭皮の血管

 

頭蓋外の血管は、外頚動脈の枝です。外頚動脈は主に脳以外の頭部の血流に関わります。顔や頭皮などです。

 

外頚動脈の枝には、上甲状腺動脈、舌動脈、顔面動脈、上行咽頭動脈、後頭動脈、後耳介動脈、顎動脈、浅側頭動脈があります。

 

この中で、脳疾患と特に深い結びつきがあるのが浅側頭動脈、次いで後頭動脈です。また、顎動脈の枝である中硬膜動脈も重要です。

 

浅側頭動脈は、こめかみのあたりで拍動を触れることが出来る血管です。この動脈は、しばしば脳卒中その他の患者さんにおいてバイパス手術のドナー(移植する血管)として用います。つまり、脳血流が部分的に足りない患者さんには、この動脈を足りない部分の血管と吻合します(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術; STA-MCA anastomosis)。主な対象は、中大脳動脈領域ですが、上小脳動脈や後大脳動脈などにも吻合可能です。もやもや病や一部のアテローム硬化性脳梗塞、そして大型動脈瘤の手術で行うことがあります。

 

同様に、後頭動脈も血管吻合術のドナーに用います。これは、文字通り後頭部の血管です。主に、後下小脳動脈に吻合します(後頭動脈-後下小脳動脈吻合術;OA-PICA anastomosis)。

 

中硬膜動脈は、硬膜の血流を担う最大の血管です。脳神経外科手術の開頭の際に最も見かけることの多い血管です。髄膜腫(脳腫瘍)の血流を担うことがしばしばあります。切っても差し支えありませんが、もやもや病の患者さんでは切ってはならないことがあります。それは、この動脈から脳への血流のバイパス路が出来ていることがあるからです。

 

 

3D-CT血管造影(3D-CTA)
3D-CTA上から2

 

3D-CTA頭蓋外側面 3D-CTA頭蓋外後方2

 

 

MR血管撮影(MR angiography; MRA)
MR血管撮影(上方から)

 

MR血管撮影正面

 

MR血管撮影側面