脳の病気まるわかり

– 手術アプローチ –

 

手術アプローチとは

 

英単語にアプローチ“approach”という言葉あります。

 

近づくこと、接近、或いは対象とするものに迫ること、といった意味があります。

 

 

脳神経外科において手術アプローチと言えば、表面のどこの部位から病変に到達するか、という意味があり、手術成否を占う意味でも非常に重要な一要素であります。

 

 

(この言葉”アプローチ”は、病気の治療法の解説の中で出てくる用語なので、解説しておきます。)

 

 

脳神経外科手術の主な手術の一つとして、頭蓋内にある病変を摘出する手術がありますが、頭蓋内の表面に近いところにある病変を摘出する際には、それぞれの施設の工夫こそあれ、一番近いところから病変に接近するので、基本的なアプローチは同じようなものです。

 

一方で、脳腫瘍を始め深部の病変を摘出する際には、様々なアプローチが考えられます。殊に、頭蓋底腫瘍(参照:脳実質外腫瘍)という脳の裏にある腫瘍を摘出する際に議論の対象となることが多いのですが、脳深部の脳実質内腫瘍においても時に重要になります。
脳の深部にある”島(insula;インシュラ)”や”基底核”に発生した脳実質内腫瘍(グリオーマ)では、脳を切除する部位を最小にすることを優先した場合には、前頭葉と側頭葉の間の隙間であるシルビウス裂を分けて奥に入ると、基底核はすぐ近くにあり、大脳の切除を最小限にして病変にアプローチすることができます。

 

シルビウス裂を分けるという操作は、脳神経外科手術においてよくなされる手技の一つではあり、これが出来るということは成熟した脳神経外科医として当たり前のことではありますが、基底核の病変を摘出するにはシルビウス裂を広く完全に開ける必要があります。
シルビウス裂には多数の動脈や静脈が走行しており、これをきちんと完全に開くとなるとそう簡単な話でもありません。そして、このアプローチで確保できる視野は比較的窮屈なものになります。ですので、術者や対象となる病変によっては別のアプローチとして、脳の表面の一部(前頭葉もしくは側頭葉)の一部を切除して掘った穴から病変の摘出を行う様に説明を受けるかもしれません。腕に覚えのある術者なら多少のリスクを背負ってでもシルビウス裂からのアプローチを提案するかもしれません。

 

基底核の話はほんの一例です。腫瘍に限らず、脳の深部の手術を行う際には病変の性状や大きさ、そして術者のこれまでの経験などにより、術者によって提案する方法が異なる場合があります。