脳の病気まるわかり

術式あれこれ

 

脳神経外科領域で現在行われている手術の術式について簡単に概説します。

 

 

穿頭術

 

最も簡単な術式です。穿頭器という道具を使い、頭蓋骨に1円玉大の小さな穴を開けて行う手術です。そのためには、穴を開ける部位の周辺の皮膚を3-4cm程度切る必要があります。通常、理解力と自制心のある成人に対しては局所麻酔で行うことが出来ます。

 

 

この手法が用いられる主な手術

・慢性硬膜下血腫の血腫除去
・脳室内出血・脳膿瘍などに対するドレナージ術
・水頭症に対するシャント手術
・パーキンソン病などに対する定位的電極留置術
・定位的な腫瘍生検手術
・脳室鏡(内視鏡)を用いた生検手術や第三脳室底開窓術
・脳内出血に対する内視鏡下血腫除去術

 

穿頭そのものは、手技としては容易で、初期研修医や後期研修医が専門医の見守りの上で行うことが出来るようなものです。

 

 

開頭手術

 

昔から、脳神経外科の主流の手術で、非常に多くの場合に用いられます。しかし、内視鏡手術や血管内手術、定位放射線療法などの発達により、近年では開頭術が用いられる状況が少しずつ減少しつつあります。
皮膚を切開して頭蓋骨を露出した後、頭蓋骨に複数の穴を開け、その穴の間を繋いで頭蓋骨の一部を一時的に外します。場所や大きさは、病変の存在する部位により様々です。最も代表的なのは、左右どちらかのこめかみの付近を中心とした開頭術です。
難易度は様々で、専門医前の後期研修医レベルのものから、エキスパートのみが行うものまであります。

 

 

この手法が用いられる主な手術

・外傷性頭蓋内血腫(硬膜外血腫・硬膜下血腫・脳内血腫)に対する血腫除去術
・(非外傷性)脳内血腫に対する血腫除去術
・脳動脈瘤に対する動脈瘤頚部クリッピング手術
・もやもや病や主幹動脈閉塞症に対するバイパス手術
・脳腫瘍に対する腫瘍摘出術
・脳ヘルニアに対する減圧開頭手術
・神経血管圧迫症候群(三叉神経痛・顔面けいれん)に対する微小血管減圧術
・てんかんに対する焦点切除術・脳梁離断術・機能的半球離断術

 

 

経蝶形骨洞手術

 

下垂体腫瘍などに対して比較的古くから行われている術式です。もともと手術用顕微鏡下に行われていたのですが、近年では内視鏡を用いた拡大蝶形骨洞手術が増えてきました。こうした背景には、内視鏡の品質向上と手術手技の確立・安定による進歩があると言えます。
この術式はトルコ鞍の近傍の病変にのみ用いることが可能で、その良い適応は下垂体腫瘍の他、ラトケ嚢胞、頭蓋咽頭腫ですが、髄膜腫や斜台部腫瘍、非常に例外的ながら脳動脈瘤に対して用いられることもあるようです。なお、髄膜腫のような硬い腫瘍は、通常は内視鏡での摘出には不向きと言えます。

 

 

頚部の手術

 

脳神経外科領域ではしばしば頚部の手術を行うことがあります。最も多いのは、頚動脈が内頚動脈と外頚動脈に分岐する部分の狭窄病変に対する頚動脈内膜剥離術です。その他の特殊な術式として、脳へ大量の血流の供給が必要な患者さんに対するバイパス手術や、難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法の手術などがあります。
比較的専門性の高い手術です。

 

 

主な術式

・頚動脈内膜剥離術
・high flow bypass手術の手技の一部として
・迷走神経刺激装置植え込み術

 

 

脊椎・脊髄の手術

 

脊髄腫瘍、脊髄血管病変、先天性の二分脊椎などは脳神経外科医が主に扱う疾患です。その他、脊椎の変性疾患については、脳神経外科領域と整形外科領域のそれぞれの脊椎外科専門医が扱う手術です(※二分脊椎は小児神経外科医)。
脊椎・脊髄の手術では脊髄機能を温存する必要があるので、脊髄を中心に戦略を考える必要があります。脊椎・脊髄は体の後方にある組織なので、後方から入った方が病変にアプローチしやすいのですが、脊髄より前方の部分に脊髄を損傷せずに入るには前方(体の前)からの方が有利なことがあります。

 

 

主な脊椎・脊髄手術

・脊髄腫瘍手術
・脊髄血管障害(動静脈瘻/動静脈奇形)手術
・二分脊椎手術
・頚椎変性疾患手術(冠軸椎固定術、前方法:前方固定術、後方法:椎弓形成術)
・腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板切除術
・腰椎変性疾患手術(椎弓切除術、椎間固定術(PLF、PLIF)
・胸椎疾患に対する前方法、後方法手術

 

 

血管内手術

 

最近、急に発展を遂げつつある分野です。一部の脳梗塞の経過や予後が劇的に変わりました。また、脳動脈瘤では開頭手術を要することが減りましたし、上述の頚動脈内膜剥離術も半減しました。脳動静脈奇形に対する開頭手術との併用により、手術の難易度が下がりました。
血管内手術はカテーテル検査の応用で、腕や足の付け根の動脈から挿入したカテーテルを用いて行います。

 

 

血管内手術の主な対象

・超急性期脳梗塞に対する血栓回収療法
・脳動脈瘤などに対するコイル塞栓術
・動静脈奇形や脳腫瘍に対する流入血管塞栓術
・動静脈瘻に対する経静脈的もしくは経動脈的塞栓術
・狭窄性血管病変に対するステント留置術

 

 

定位放射線療法

 

MRIを基に、病変に対して正確に集中的に放射線を当てて、病変を治療します。
ガンマナイフ、サイバーナイフ、ノバリスなどの装置があります。それぞれの特徴、長所と短所があります。
全身麻酔による開頭手術が要らないというメリットがあります。一方、局所に強い線量の放射線を照射しますので、周辺組織への放射線の影響が問題になります。そこで、適応となる部位や大きさには制限があります。
総合病院であればどこにでもあるような装置ではありません。一番近いところに紹介してもらうことになるでしょう。

 

 

定位放射線療法の一般的な適応疾患

 

・転移性脳腫瘍
・その他の脳腫瘍(頭蓋咽頭腫、聴神経腫瘍、そのほか下垂体腺腫や髄膜腫の一部)
・脳動静脈奇形
・三叉神経痛