脳の病気まるわかり

スペクト(SPECT)

 

スペクト (単一光子放射断層撮影;single photon emission computed tomography,SPECT)とは

 

体内に投与した放射性同位体からガンマ線を検出し、その分布を画像化したものです。

 

SPECT検査では、体内に入ると特定の組織に取り込まれる性質のある物質(リガンドと言います)を利用します。その物質(リガンド)に放射線を放出する物質(放射線同位体)を組み込んだ「放射性リガンド」を用います。体内に吸収された物質の分布の追跡を行うのに用いられるため、放射性トレーサーとも呼ばれます。放射性トレーサーを注射すると、血流に乗って特定の組織に分布します。分布したリガンドから放出された放射線を捕えるのがスペクトです。

 

理論はPETと同じですが、PETでは陽電子を利用するのに対してSPECTではガンマ線を利用するのが最大の違いです。陽電子の半減期は数十分と非常に短いのですが、ガンマ線は数時間以上と長いため、取り扱いは比較的容易で、放射性リガンドには市販されているものを用いることができます。ただ、ガンマ線は体内で吸収・散乱しやすいため、PETと比較すると感度が悪く、画像が不鮮明になります。

 

 

 

 

SPECT画像は断層画像ですが、解像度が悪く時として病変の部位を特定することが困難です。SPECTとCTを組み合わせたものがSPECT-CT装置です。SPECT画像とCT画像を重ね合わせることによって病変の位置をより正確に同定することができるものです。

 

SPECTは、脳血管障害、虚血性心疾患、癌などで利用されます。

脳では、脳血管障害おける局所の脳血流異常、てんかんにおける発作が生じる場所の診断、脳腫瘍の評価、水頭症や髄液漏における脳脊髄液の動態解析、認知症の診断などに用いられています。

 

検査の流れは以下のようになります。

① 放射性医薬品を注射する

② 薬が体内の目的とする各部位(脳など)に行き渡るまで待つ

③ 尿を排泄してもらう

④ ガンマカメラで撮像する

ガンマカメラは患者さんの体の周りを回りながら、トレーサーから放射されるγ線を撮像を行います。ガンマカメラで捉えた放射線を、画像再構成演算ソフトを用いて処理し、断面像を作成します。

 

 

脳血流SPECT

 

脳血流検査として123I-IMP、99mTc-ECD、99mTc0HMPAO、てんかん焦点診断に用いられる検査として123I-IMZなどがあります。

同じ脳血流検査でも、99mTc-ECD、 99mTc-HMPAOは高解像度の画像が得られ、緊急時の検査やスクリーニングに向いています。ただ、血流が非常に多い部位や、血流量と代謝とが不一致の場合には血流量を適切に反映していない可能性があります。一方、123I-IMPは脳への取り込み率が高く、タイミングを合わせて撮影することで脳血流量を反映した画像が得られます。定量値の測定に適しており、精密検査に向いています。

 

脳血流検査の際には、ダイアモックス(アセタゾラミド)という薬を注射してしばらくしてから検査を開始します(ダイアモックス負荷SPECT)。ダイアモックスを注射すると、脳の血管が拡張して脳血流が50~80%増加します。しかし、もともと脳血流が不足している部分ではもとから血管が拡張しきっているため、ダイアモックスを負荷しても更に拡張することはできず、血流はあまり増えません。それどころか、周囲のダイアモックスに反応して血管が開いたところに血流を奪われて、本当に血流が不足しているところの血流は奪われてしまします。これを、盗血現象と呼び、脳循環予備脳が極端に低下していることを意味します。

 

ダイアモックスを使用した検査では、2014年までの約20年間に急性心不全や肺水腫などの重篤な副作用が8件報告された(うち6件で死亡)ことを重視して、2015年に適正使用指針が発表されています。

 

① 検査適応の慎重な検討

② ハイリスク症例の除外

③ 十分な説明と文書による同意

④ 検査室での監視

⑤ 救急処置態勢の整備

⑥ 異常の早期発見と迅速かつ十分な治療の実施が求められます。

 

ダイアモックス負荷SPECTに対比して、負荷していない状態でのSPECTを安静時SPECTと呼びます。

脳血流スペクトは、心臓から脳へ向かう大きな血管に狭窄や閉塞がある場合に、脳血流が不足しているかどうかを判定するために用います。安静時SPECTでも血流が低下していて、ダイアモックス負荷SPECTでは更に低下もしくは10%未満の血流増加に留まる部分では脳血流が極端に低下していると考えます。その場合には、内科的治療に加えて、手術治療を検討します。

 

アルツハイマー型認知症では、早期から側頭葉内側部や頭頂・側頭葉の連合野皮質に血流低下が生じるとされ、その早期診断の補助となりえます。

 

脳血流SPECTは、てんかんの焦点診断にも有用だとされます。安静時(発作間歇時)SPECTでは、てんかん焦点は低血流を示しますが、その感度はあまり高くなく、必ずしも有用性は高くありません。一方、てんかんが毎日のように生じている患者さんの場合、てんかんが起こったタイミングに合わせて直ちに検査を行うと、発作時の脳血流SPECTを行うことが出来ます。更に、発作時と発作間歇時の血流差を引き算して画像化したものをSISCOMと呼び、てんかんの焦点診断に有用な検査の一つとされます。ただ、発作が起こるまでずっと検査室で待機していなければならないという欠点があります。

 

 

てんかん焦点診断

 

上述のように、脳血流SPECTもてんかんの焦点診断に用いることができますが、他の方法もあります。

 

てんかんでは、123I-IMZ(イオマゼニル)を用いたSPECT検査がてんかんの起始部同定に有用です。これは、脳に存在するベンゾジアゼピン受容体というものの分布を画像化したものです。ベンゾジアゼピン受容体は、脳の興奮を抑制するGABAの受容体と関連しています。つまり、123I-IMZを用いたSPECT検査では、脳の異常興奮を抑制する機能が低下しているところがないかどうかを調べる検査です。低下している部分が見つかれば、もしかしたらてんかん発作が起こりやすいことと関連があるかもしれません。

 

 

ドパミン神経系イメージング

 

123I-Ioflupane(イオフルパン)はドパミン神経伝達系の黒質線条体投射を画像化できます。パーキンソン病の疑いのある症例、 認知症でレピー小体型認知症が疑われる症例に用いることができます。

 

 

脳槽シンチグラフィー

 

脳槽ンンチグラフィーは、脳脊髄液の循環動態解析や、脳脊髄液漏出を診断する目的で行われます。

腰椎穿刺により111In-DTPAを投与すると、111In-DTPAが脊髄腔内を上行して髄液の流れに従って脳表面を循環し、吸収されます。注入から1、3、5、24、48時間後に撮影を行います。正常では投与から1- 3時間後に111In-DTPAが脳底槽に到達、24時間後には大脳に分布し、48時間後には大部分が吸収されます。

 

正常圧水頭症では111In-DTPAが投与後早期から脳室内へ逆流し、48時間以降も50%以上停滞します。外傷後の頭蓋骨骨折に伴う髄液漏では、副鼻腔や頭蓋底などの、髄液が漏れている部分一致して集積が観察されます。特発性低髄圧症候群の髄液漏では髄膜憩室を認めることがあります。

 

腰椎穿刺ができない症例や、頭蓋内圧が極めて高く危険を伴う症例では行うことができません。