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ポジトロン断層撮影検査(PET)

 

ポジトロン断層撮影検査(PET)とは

 

PET(ペット)検査とは、ポジトロン断層撮影法のことです。英語ではPositron emission tomographyで,その頭文字をとってPETになります。見た目はCTのような装置で、病気の原因や病状について機能面から診断する検査法です。

 

ポジトロンとは、陽電子のことです。通常の電子はマイナスの電荷を持っているのに対し、ポジトロンはプラスの電荷をもっています。ポジトロンはマイナスの電子と結合してすぐに消失してしまいます。この際に、放射線を放出するのです。

 

近年では、癌やその転移の検出を目的として行われることが多いのですが、中枢神経系の代謝レベルの観察には古くから利用されています。その他、虚血性心疾患の診断にも使用されます。

 

 

わかりやすいPETの原理

 

PETはポジトロン(陽電子)の検出を目的としたコンピューター断層撮影技術です。CTやMRIが主に組織の形態を観察するための検査法であるのに対し、PET(ペット)やSPECT(スペクト)などの核医学検査と呼ばれる検査は、組織の機能を観察することを目的としています。

 

PETでは、陽電子を放出する核種を結合させた物質(放射性トレーサー)を体内に注射します。この放射性トレーサーには、例えばブドウ糖など、体内に取り込まれて代謝される物質を用いています。つまり、ブドウ糖に放射性同位体元素を取り付けたものです。一方、SPECTのトレーサーには、陽電子ではなくガンマ線を放出する物質が用いられます。

 

一般的にPETはSPECTよりも感度が高く定量性にも勝れています。しかし、PET用の核種は作られると直ちに弱い放射線の放出を開始して、短時間のうちに放射線の放出が終わります。このように、放射性トレーサーとして用いる物質に結合させる核種の半減期は一般に短い(15O:2分、13N:10分、11C:20分、18F:110分など)ため、一般には使用する直前に病院内で製造されます。製造にはサイクロトロンという大がかりな装置を用います。そのため、PETを置いている施設数は限られています。

 

 

放射性トレーサーを注射すると、体内の各臓器に取り込まれます。PET装置は、臓器内でトレーサーから放出された陽電子を検出します。検出された陽電子の分布をコンピューター画像処理により解析し、トレーサーの分布を示す三次元画像を作成します。

 

 

PETの臨床応用

 

PET用のトレーサーとして最もよく用いられるものは、グルコース(ブドウ糖)代謝を測定する18F-fluorodeoxy glucose(フルオロデオキシグルコース、FDG)というものです。一般にはFDG-PETと呼ばれています。18F-FDGは、グルコースに似た物質に放射性のフッ素(18F)をつけたものです。グルコースと同じように体内に取り込まれますが、尿に交じって体外に排泄される点がグルコースは異なります。

悪性腫瘍は、通常の細胞と比較して沢山のエネルギーを利用し、活発に活動しています。悪性腫瘍の多くが活発なブドウ糖代謝を行っていることを利用して、FDG-PETは悪性腫瘍の診断に用いられます。そして、悪性腫瘍の転移の評価にも用いられます。

 

 


FDGを用いたPET (PET/CT)

 

 

PET検査では、暖かい色(赤)ほどトレーサーがたくさん集積して放射性物質が沢山出ていることを意味します。一方冷たい色(青~紫)はトレーサーが殆ど集積していないことを意味します。

 

現在、健康保険でのPET検査の使用が認められている疾患は、悪性腫瘍(早期胃がんを除く)てんかん(外科手術が必要とされる方)虚血性心疾患(通常の心筋シンチでは判定困難な場合)に限られています。

 

その他、脳血流量や酸素代謝量測定用のトレーサーとしては15Oで標識したガス剤(H2O、CO2、O2)が、虚血性心疾患では他の検査で判断のつかない場合を対象とした13N-NH3があります。

 

保険適応外にはなりますが、アルツハイマー病の診断に用いられることもあります。アルツハイマー病においてCTやMRIで脳の形態的な異常がはっきりと分かるのは、神経細胞が障害を受けてある程度減少し、脳が委縮してからになります。また、脳委縮はアルツハイマー病に特有の所見ではありません。そこで、PETやSPECTで血流や代謝をみることが早期診断に結びつく可能性があります。

 

特殊な検査として、アミノ酸代謝を調べる目的で悪性腫瘍の診断に用いる11C-メチオニン、アルツハイマー病やアミロイドアンギオパチーの診断に用いられる[11C]PIB PET、パーキンソン病の診断に有用な11C-CFT (DAT)、てんかん焦点に特異的なflumazenilなどといった様々なトレーサーもあります。但しこうしたトレーサーには保険が効かないので、自己負担になります。

 

CTやMRIは解剖学的な情報(臓器の形態)を把握するのに有用であるため形態画像と呼ばれる一方、PETやSPECTは体内の代謝や血流などを把握するのに有用なので機能画像(functional image)と呼ばれています。機能画像ではわかりにくい細かな位置情報をよりわかりやすくするために、PETとCTを同時に撮影して重ね合わせる装置(PET/CT)も開発されており、主流となりつつあります。更に、一部の施設ではPETとMRIを重ね合わせる装置(PET/MRI)も用いられています。