脳の病気まるわかり

運動誘発電位(MEP)

 

運動誘発電位 Motor evoked potentials; MEP

 

運動誘発電位は、脳神経外科領域の周術期に最も頻繁に用いられる機能検査です。

 

手足の運動機能(動き)の評価に用います。幾つかの方法があり、手術中の他、手術前後の機能評価にも用いることが出来ます。

 

運動誘発電位では、大脳の運動細胞が存在する部分である”一次運動野”を刺激して、脊髄や手足から反応を記録します。

 

 

MEPの実際

 

一次運動野の刺激の方法としては、電気刺激磁気刺激があります。磁気刺激には「8」の字型をしたコイルを用います。磁気なので、当てても人が感じることはなく、痛みもありません。ただ、通常は手で持って当てるので、一定の部位を確実に刺激することができません。また、コイルが大きいので、手術中に使用するには不向きです。

 

手術中の脳機能モニタリングには、一次運動野に対する電気刺激を用います。電気刺激の方法にも2種類あります。一つ目は、頭皮の上から電流を流す方法です。もう一つは、脳表から直接電流を流す方法です。いずれも、基本的には手術時にしか用いません。皮膚から脳に届く程度の電流を流すと、かなりの痛みを伴います。ですので、全身麻酔で寝ている時にしかできないのです。

 

脳表から直接刺激する時には4-25mA程度の電流を、皮膚から電流を流すときは、40-200mA程度の電流を流します。それによって脳の神経細胞が刺激を受けて興奮し、興奮が脊髄を介して手足に伝わります。筋弛緩薬を用いていなければ、全身麻酔で寝ていたとしても筋肉が収縮して手足が動きます。

 

記録の方法には2種類あります。一つは、脊髄の硬膜下に挿入した電極を用いて、神経が刺激されて生じた電位を脊髄から記録する方法です。

 

もう一つは、目的の筋肉に刺した2つの電極を用いて、筋肉の動き(筋電図)を記録する方法で、こちらの方が安全かつ容易ですから、スタンダードに用いられています。

 

 

MEPの臨床応用

 

運動誘発電位は、術前後には運動機能が保たれていること、術後に変化していないことの確認に用いることが出来ます。術中には定期的に反応を見ることで、術中に麻痺が生じていないかを推測するのに用いることが出来ます。

 

麻痺が生じる原因を2種類に大別すると、運動野や運動路の直接の障害によるものと、運動野への血流障害に伴うものです。ですので、運動野や運動路に近接した腫瘍などの手術、そして運動野へ向かう血流路に関する血管の手術などでは運動誘発電位モニタリングが用いられます。

 

運動誘発電位モニタリングと術後の運動機能の関係については一概には言えない部分もありますが、少なくとも手術開始時と比較して50%以上の反応があれば運動機能は保たれている一方、10%以下であれば何らかの障害が術後に残っている可能性が高く、殆ど消失している状態であれば高度の麻痺が出現している可能性が高いと考えられます。

 

脳を電気刺激することによる脳神経細胞の障害が出るのかどうかについてはよく分かっていません。ただ、電流が強すぎるとけいれんを誘発するなど、問題となりますので、先に記載した程度の刺激に留めることが重要です。また、刺激頻度が多すぎると脳に不可逆的な損傷を引き起こす可能性がありますが、通常使用する範囲内では有害な合併症は生じません。

 

 

まとめ

 

運動誘発電位は、脳の一次運動野近傍の病変、錐体路(皮質脊髄路)近傍の病変(基底核、脳幹など)、脊髄を巻き込んだ病変、こうした部位を還流する領域の血管病変(頚動脈の動脈瘤など)の手術では必須の術中モニタリング検査です。