脳の病気まるわかり

聴性脳幹反応(ABR/BAEP)

聴性脳幹反応とは

 

聴性脳幹反応とは、耳から音を聞いてもらい、それによって生じる脳の反応を波形として記録するものです。

英語では、Auditory Brain Response、もしくは、brain-stem auditory evoked potentialと言い、それぞれABR、BAEPと略します。

 

 

聴性脳幹反応に関わりのある解剖

 

音情報が耳から入ると、外耳(鼓膜の外)→中耳(鼓膜の奥)→内耳へと伝わります。内耳は大きく分けて蝸牛、前庭、半規管の3つから成ります。聴覚に関わるのは蝸牛というという器官で、名前の通りカタツムリのような形をしています。蝸牛は、音振動を電気信号に変換して脳に伝える役割があります。

 

音情報は電気信号として蝸牛から蝸牛神経へ伝わって脳の蝸牛神経核(延髄と橋の移行部)に到達します。

 

そこからは、上オリーブ核(橋)→外側毛帯(橋)→下丘(中脳)→内側膝状体(大脳深部)→一次聴覚野(大脳側頭葉)へと伝わります。

 

 

記録方法は

 

頭皮に電極を付けると、音に対する反応を記録することが出来ます。主な反応は10ミリ秒(1,000分の10秒)以内のとても早い反応です。1回の反応はごく小さな反応ですが、これを500~1,000回程繰り返し重ねて記録し、増幅すると、一定の波形として見えるようになります。これが聴性脳幹反応です。

 

1秒間に10回~の音を聞いてもらうので、1,000回記録しても100秒で1回の検査は終了します。

 

正常であれば、大小の7つの波が得られます。それぞれの波の由来は以下のように言われています。

 

I波   蝸牛神経

II波  蝸牛神経核(延髄)

III波 上オリーブ核(橋)

IV波  外側毛帯(橋)

V波   下丘(中脳)

VI波  内側膝状体

VII波 大脳聴覚野

 

 

どのように使われますか

 

聴性脳幹反応は、幼児の聴覚閾値検査や、機能的な難聴の診断(心因性の難聴や詐病)や、脳死判定、脳神経外科領域(聴神経腫瘍など)の術前術中評価などに用いられます。

 

評価する項目は、①7つの波形が出ているか、②振幅は十分に高いか、③波形が出現するタイミング(潜時)は適切か(遅くないか)などです。潜時が遅かったり、波形が見られなかったりすると、音が脳に到達していないことになります。

 

蝸牛神経を巻き込むような脳腫瘍においては、手術中に聴性脳幹反応を記録しながら進めます。患者さんは全身麻酔で寝ているので、音を聞いているという認識はありませんが、大きな音を聞いてもらうと、脳の反応は得られます。反応が悪化すると、まず潜時が延長し、次第に振幅が低下して消えてしまいます。一度消えるとなかなか回復することはありませんし、術後に聴力が衰えている可能性が高まります。

 

この検査は、術前から聴力が十分に良くない方では反応も見られないので、行うことができません。