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– 脳内血腫(脳出血):小脳出血 –

小脳出血とは

 

 

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小さな小脳出血(左) と 大きな小脳出血(右)

 

 

小脳出血とは、文字通り小脳に出血したものを言います。脳出血の約10%を占めます。

 

小脳出血の原因のうち大多数は被殻出血や小脳出血と同じく高血圧です。他に、小脳の腫瘍や動静脈奇形静脈性血管奇形などがあれば出血の原因となります。

 

高血圧性小脳出血であればその発症年齢は50~60歳以上の高齢者が大半を占めます。腫瘍も高齢発症が多いことから、腫瘍に伴う脳出血も高齢の方に多いですが、血管奇形などによる出血は若年者でも起こり得ます。

 

 

小脳出血の病態は

 

 

高血圧性小脳出血の場合、小脳の歯状核という部分の血管から出血することが多いと言われています。

 

小脳が入っているスペースを後頭蓋窩と呼びます。後頭蓋窩には小脳のほかに脳幹が入っています。比較的大きな小脳出血が生じると、小脳や脳幹が圧迫され、後頭蓋窩がぎゅうぎゅうに詰まってしまいます。小脳や脳幹の機能が低下し、また入りきれない小脳や脳幹が小脳テントから上に飛び出したり(上行性テントヘルニア)、大後頭孔から頭蓋外に飛び出したり(大孔ヘルニア)します。

 

その他、出血量が多くなると、中脳水道や第四脳室といった脳脊髄液の流出路が閉塞してしまい閉塞性水頭症を起こします。

 

 

小脳出血の症状は

 

 

小脳は、体のバランスを取る部位です。小脳で出血が生じると体のバランスが悪くなり、めまいを生じます。めまいを生じると気分が悪くなりおう吐します。その他、バランス障害ですから、歩行や座位の保持が困難になり、出血した側と同じ側の手足の細かい動きが出来なくなります。利き手と同じ側の出血では、上手に手で箸を持ったり字を書いたりができなくなります。歩行ができる場合でも、酔っ払ったような歩行になります(酩酊様歩行)。バランスの悪さが原因で、ろれつが回らなくなります(構音障害;断綴性言語)。

 

また、後頭蓋窩の頭蓋内圧が高まり、出血の大きさにより様々な程度の頭痛を伴います。出血が大きくなると意識障害を伴い、極めて大きいと命が危険に晒されます。意識障害が起こる原因は、上記のヘルニアによるものと、水頭症によるものとがあり得ます。

 

その他、眼振や共同偏視と言った眼球運動の異常を伴うことがあります。

 

 

小脳出血の治療は

 

 

小脳出血の治療は大きく、手術を行うか、行わないかで分かれます。わが国では、手術するかしないかの境界がほぼ明瞭にわかれていて、血腫の最大径が3cmを超えると手術、3cm未満だと内科的治療が勧められます。

 

この理由は、やはり意識障害と関連していて、(年齢にもよりますが)3cm未満だと周囲の小脳や脳幹への圧迫が強くなく、後頭蓋窩のゆとりもあるので、手術をしてもそれほど状態が改善するわけではありません。むしろ、手術による体への侵襲や合併症の問題を考慮すると、しない方がいいということになります。

 

一方、3cmを超えると後頭蓋窩の圧が高まり、意識状態が悪化することが多くなります。また、発症直後は大丈夫でも、そのうち周囲の脳が腫れてきて、後から悪くなることもあります。また、3cmを超えると閉塞性水頭症を合併する確率が高くなります。このような状態では、意識レベルの改善や救命を目的とした手術を行うことが推奨されています。

 

 

手術の方法は

 

手術の方法として、開頭手術内視鏡による手術とがあります。どちらを行ってもいいのですが、開頭手術の方がまだスタンダードだと思います。但し、この方法は開頭に時間を要しますので、後頭蓋窩の減圧を達成するまでに余計に時間を取ってしまいます。また、体への侵襲が大きくなり、術後の回復を考慮すると内視鏡の方が優れているといえます。

 

内視鏡手術では、頭皮を小さく切り、後頭部の頭蓋骨に1円玉程度の孔をあけ、ここから小脳を通じて血腫の内部に内視鏡と吸引管を突っ込んで、内部の血腫を可及的に摘出します。手術開始から血腫除去を開始するまでに30分もかかりませんので、小脳出血に対しては特にメリットの大きい方法と言えます。

 

 

手術に伴う危険性

 

いずれの方法を行っても、手術に伴う危険性として、術後再出血、感染症などがあり得ます。髄液漏、創傷治癒不良などは、開頭手術の方で生じやすいと言えます。また、開頭手術では低頻度ながら重要な動脈(椎骨動脈)や静脈(S状静脈洞)の損傷なども考慮せねばなりません。

 

出血量が極めて大きくて、呼吸が止まりかけている場合などは、手術を行っても手遅れの可能性が高く、手術を見送らざるを得ないこともあります。なお、小脳出血の場合には高度の意識障害が生じていても、水頭症が原因であれば血腫除去手術を行うことで改善が望めるケースもあります。

 

 

合併する水頭症に対する手術

 

水頭症に対して脳室外ドレナージ手術(前頭部から側脳室に向かって脳室穿刺し、脳脊髄液を外部へ出すチューブを挿入する)を行うことがあります。注意せねばならないのは、脳ヘルニアの状態の時に、この手術のみを行うと却って脳ヘルニアを悪化させる可能性があるということです。ですので、脳室外ドレナージを単独で行う場合には十分なリスク評価が重要です。

 

一方、血腫除去手術を行うとそれで脳脊髄液の流出路の圧迫が軽減され、閉塞性水頭症自体が改善する可能性がありますので、血腫除去術後には必ずしも脳室外ドレナージは必要ありません。

 

 

その他の治療

 

手術を行うにせよ、行わないにせよ、内科的治療としては、降圧療法(血圧を下げる)、脳圧降下剤、止血剤、胃粘膜保護剤などの点滴・内服になります。点滴は、1~2週間以内で行います。

 

口からものを食べられない時には必要に応じて水分や栄養補給を目的として点滴を行います。緊急手術の可能性を回避することができれば、口から食べられるようになり次第、経口摂取を開始します。そうでない場合には、栄養改善が重要なので、可及的速やかに経鼻胃管による栄養剤の補給を行います。

 

また、出血の増大が止まり、状態が安定すれば即リハビリを開始します。リハビリを開始しても、初期にはめまいやおう吐のためリハビリが進まないかもしれませんが、この時期を頑張って乗り越えたほうが後々の経過がいいと思っています。

 

全身状態が安定し、リハビリに専念できるような状態になれば、回復期リハビリテーション病院へ転院して、半年以内、集中してリハビリを行います。リハビリを行うまでもないほど症状が軽い場合には、自宅退院でも構いません。寝たきりの場合には残念ながら積極的なリハビリを受けられませんので、療養型の病棟への転院になるかもしれません。

 

 

小脳出血の予後

 

 

手術しないでいい場合、もしくは手術が間に合って意識が改善した場合には、多少のふらつきは後遺症として残りますが、自宅復帰も可能なケースも多いと思われます。一方、手術前の状態があまりにも厳しい場合には、寝たきりになるか若しくはお亡くなりになるケースもあるでしょう。

 

 

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