脳の病気まるわかり

– 脳内血腫(脳出血):皮質下出血 –

 

皮質下出血とは

 

 

大脳の表面を覆っている部分を皮質と呼びます。皮質下出血とは、この皮質の近傍からの出血を指します。他の部分の出血とは原因や病態、治療方針がやや異なります。

 

 

皮質下出血3-blog 皮質下出血4 アミロイド?-blog
ともに、皮質下出血の例。右のものはアミロイドアンギオパチーによる出血が疑われる。

 

 

原因は

 

 

他の部位の出血の原因の殆どが高血圧と関連したものであるのに対して、皮質下出血の場合には高血圧が直接の原因となることはむしろ例外的で、原因の多くは高血圧と直接関係ないものです。

 

皮質下出血の原因として多いものは、年齢によってちょっと異なります。

 

小児~青年期の場合には脳動脈奇形海綿状血管腫(海綿状血管奇形)、更には静脈性血管腫(髄質静脈奇形)などの血管奇形をまず疑わなければなりません。

 

中年期~壮年期でもこうした血管奇形は皮質下出血の原因となり得ますが、その他にも脳腫瘍などの可能性も考えなければなりません(小児~青年期の原因としても脳腫瘍はあり得ます)。
時に、脳動脈瘤の破裂(くも膜下出血の主原因)に伴い大きな脳内出血となり、くも膜下出血は目立たないこともあり得ます。

 

高齢者においても、他の年代と同様に血管奇形や脳腫瘍からの出血もあり得ますが、高齢者特有に増加するものとしてアミロイドアンギオパチーというものがあります。アミロイド蛋白という物質が脳の末梢血管の壁に沈着することと関係していると言われ、アルツハイマー型認知症のある高齢者で多いパターンです。

 

硬膜動静脈瘻という病気は、硬膜動脈と脳静脈/硬膜静脈が毛細血管を介さずに直接つながった病気ですが、この病気では硬膜動脈の血流が脳静脈へ逆流を起こし、出血の原因となることがあります。

 

皮質下出血と間違えやすい出血のパターンとして、脳梗塞に合併する出血があります。脳梗塞では死んでしまい脆弱になった脳組織への血流が回復すると、出血しやすくなります。梗塞の大きさの割に出血が大きいと、脳梗塞なのか脳出血なのか区別がつかなくなります。

 

静脈洞血栓症といって、脳の静脈が閉塞する病気でも静脈血のうっ滞が起こり、逆流を起こして静脈性の脳梗塞を生じたり、場合によっては出血したりします。

 

 

症状は

 

 

皮質下の症状は、出血した部位の脳局所障害に伴う症状と、頭蓋内圧亢進に伴う症状に分けられます。

 

局所障害に伴う症状としては、例えば病変が一次運動野にあれば運動麻痺が、言語中枢にあれば言語障害が出ます。その他、視野障害や認知機能障害、思考の障害、感情の障害(高次脳機能障害)などが生じることがあります。また、大脳皮質のどの部位に出血が生じても、けいれん発作が生じることがあります。

 

頭蓋内圧亢進に伴う症状としては、頭痛おう吐意識障害などがあります。頭蓋内圧が高まる状態は、若くて脳の萎縮が少ない人では比較的小さな出血でも起こり得る一方、高齢者では脳が萎縮して頭蓋内のスペースにゆとりがあるため、比較的大きな出血でも目立たないかもしれません。

 

 

検査と診断

 

 

脳皮質下出血の診断において最も重要な検査は頭部CTです。頭部CTで大脳の比較的表面に近い部位に白い部分(高吸収域)を認めます。

 

大脳皮質下出血を認めた場合、出血の原因についていろいろと検討する必要があります。上述のように、年齢に応じて出血の原因として可能性のあるものとして何があるかを想定します。造影剤を使用しない単純CTでも、石灰化で白く見える部位や、その他の出血以外の異常に見える部位があれば、診断を確定する根拠になるかもしれません。

 

アミロイドアンギオパチーの場合、出血がややまとまりに欠けて不整であったり分散していたりすることが多く、こうした所見と年齢(高齢)などを合わせて診断します。

 

皮質下出血の場合、かなりの高齢で認知症を伴っているような患者さんを除くと、造影剤を使用したCT検査を行ったほうがいいと思います。そうすれば、動静脈奇形静脈性血管腫など、出血源となる異常が見えてくることが多いからです。また、腫瘍からの出血でも、腫瘍の何らかの特徴がわかるかもしれません。

 

MRIは、単純・造影CTを行った後に必要であれば追加します。動静脈奇形や静脈性血管腫でもMRIはCTに加えて診断的価値があります。海綿状血管腫などでは、CTではよく分からない場合も多いですので、MRIまで行ったほうがいいと思われます。腫瘍の場合にも造影剤を使用したMRIが必須の検査です。

 

血管系の異常が明らかであれば、脳血管造影検査を行ったほうがいい場合が多いです。特に、動静脈奇形においては、異常血管の全体像を把握するためにも欠かせない検査といえるでしょう。

 

 

治療は

 

 

脳皮質下出血の治療は、大きさや出血の原因となる病変により異なります。

 

一つには、血腫そのものを除去する必要があるかどうかです。血腫が大きくて意識障害を伴っている場合には、血腫除去を行ったほうがいいです。大きな血腫は脳表近くにまで広がっていますので、開頭手術をして脳の表面をちょっと切開すると血腫に当たります。一方、ごく小さな血腫で意識も保たれている場合には、敢えて血腫除去を行っても得られるメリットは少ないと言えるでしょう。

 

脳卒中ガイドライン(日本脳卒中学会)によると、「脳表からの深さが1cm以下のものでは特に手術の適応を考慮して良い」とされています。「手術を行ったほうがいい」ではありませんので、大きさや症状を踏まえたうえで主治医の先生と協議して決定しましょう。

 

なお、アミロイドアンギオパチーによる出血の場合には、脳の血管全体が脆弱なこともあり、年齢や脳の萎縮の程度などを考慮した上で、手術そのものには消極的な立場もあり得ます。

 

もう一つは、出血の原因となっている病変をどうするかです。血管障害や腫瘍などといった原因となる病変がある場合、早晩治療せねば再出血を起こすなどの問題があります。そのタイミングについては、原因病変の診断によっても異なります。それぞれの原疾患の項目をご参照ください。

 

 

予後は

 

 

脳皮質下出血の予後は、出血の原因や部位によって大きく異なりますので、一概には言えません。基本的に、出血後の初期症状、そして術後の状態に規定されると考えられます。ただ、大脳皮質が傷ついた場合には、後にこれがてんかんの原因になることがあります。予防的治療は不要ですが、発作を起こしたことが1度でもあれば、再発防止のための治療を開始したほうがいいと思われます。

 

 

 

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