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– 脳内血腫(脳出血):脳幹出血 –

 

脳幹出血とは

 

 

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脳幹出血の頭部CT(中央のぼやっと白いところ)

 

 

脳出血の一種で、脳幹と呼ばれる部位に出血するものです。脳出血全体の5~10%を占めます。

 

脳幹は、小脳とともに後頭蓋窩の主要な構成物です。脳幹は、小脳と強い結びつきがあるほか、脳幹から上に行けば大脳と結合していますし、下に行けば脊髄と連続し、脊髄からは手足に末梢神経が延びます。つまり、神経組織の中核をなす大動脈でもあり、神経系の心臓部でもあるといえます。

 

脳幹は小さな脳ですが、そこには多くの機能が詰まっていて、小さな出血でも大きな後遺症となりえます。

 

脳幹は、大脳に近い方から”中脳”、”橋”、”延髄”の3つの部分に分かれます。脳幹出血は主に橋に生じることが多く、主な原因は高血圧です。その他、海綿状血管腫などの血管奇形が原因となって生じることも時々あります。

 

 

脳幹出血の症状は

 

 

小さな脳幹出血では、出血した部位の脳機能に関わる症状が出現します。

 

例えば、眼球運動障害顔面の麻痺、一側の難聴嚥下困難手足の運動麻痺感覚障害などです。こうした症状の一部(もしくはその組み合わせ)が出現します。とりわけ、眼球運動障害などは比較的高頻度ですが、その障害のされ方は、眼球運動のどこが障害されたのかによって変わってきます。一側の眼の動きの障害だったり、両目の左右への動きが高度に制限されたりします。麻痺や感覚障害などは左右のどちらか一側であることが多いですが、血腫の伸展の程度によっては両側性に障害が起こることもあり得ます。

 

大きな出血では、意識に関わってきます(意識障害。脳幹は小さな構造物ですので、直径2-3cmの出血でもかなりの障害となりえます。そして、このような大きな出血になると死亡する割合が高くなります。

 

その他、脳幹の後ろには第四脳室がありますが、脳幹出血が破れて大量の血液が第四脳室に流れ込んだ場合には、閉塞性水頭症を起こし、これにより意識が悪くなることもあります。

 

 

脳幹出血の検査・診断

 

 

脳幹出血の診断には、頭部CTで十分です。頭部CTでは脳幹の内部に高吸収の(白い)部分が存在するのがわかります。これだけで、診断はほぼつきます。

 

小さな出血であれば、更に大きくならないか、時間を追って検査を繰り返し、確認する必要があります。出血の拡大が止まったかどうかを確認するには、一つには、数時間の時間をあけて繰り返したCTで変化がないこと、もう一つには出血の翌日以降の検査でもやはり変化がないことで確認できます。

 

また、出血の原因として高血圧以外のものが疑われる場合には、必要に応じて造影剤を使用したCTアンギオ検査やMRI、場合によっては脳血管造影検査まで行う場合もあります。こうした検査により、海綿状血管腫その他の異常がないかを確認します。

 

 

脳幹出血に対する治療方針

 

 

脳幹出血については大抵の場合、手術を行うことはありません。脳幹は深いところにある小さな組織であり、脳幹に到達するのは容易でありませんし、また血腫を減量することにより得られるメリット(状態の回復)はごく限られたものなので、手術の意義は少ないのです。

 

もう少し詳しく解説します。上記のような脳幹出血の症状は、出血により脳幹の一部が物理的に破壊されたことによって生じたものです。血腫を取り除いても、物理的に壊された脳のネットワークが再建されるわけではありません。ですので、何もよくならないのです。

 

例外もあります。

 

脳幹出血に脳室内出血と閉塞性水頭症を併発していて意識が悪い場合、水頭症に対する治療を行うことで意識が回復する可能性があります。この場合にも、意識障害の原因が脳幹出血であれば水頭症に対する治療を行っても意識障害は改善しませんので、術前によく検討する必要があります。水頭症が原因と考えられた場合には、脳室外ドレナージ術を行います。

 

出血の原因が海綿状血管腫などであった場合、出血を繰り返すことがあるため、原因を取り除くため慢性期(落ち着いた頃)に手術をすることがあります。ただし、難しいアプローチになりますので、安易に考えるものではありません。

 

では、手術以外の治療はどうするかというと、出血の更なる拡大や、血腫周辺の局所の腫れを最小限にするために出来ることをします。高血圧の是正(降圧剤の投与)、出血傾向の是正、止血剤の投与、脳圧降下剤の投与、胃粘膜保護剤の投与などです。また、初期は絶食になりますので栄養や水分補給を目的として点滴を行います。

 

前述のように、CTを繰り返して大きくならないことを確認できれば、栄養療法やリハビリなどが開始されます。栄養は、嚥下に問題なければ経口で開始します。嚥下に問題があったり、意識の回復が不十分な場合には経鼻経管栄養となります。経鼻経管栄養が長きに渡る場合、管理上の問題から胃瘻の増設を勧められるかもしれません。また、リハビリテーションの介入も出来るだけ早い時期に開始することが望ましいと考えます。

 

若年者であれば意識障害や神経障害からの回復は思いも寄らず進むこともありますが、高齢者であれば障害からの回復は限られたものになるかもしれません。状態が落ち着けば、意識の状態が良ければ回復期リハビリテーション病院へ、自主的なリハビリテーションが困難であれば療養型の病院や施設へ転院することになります。

 

 

 

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