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– 脳内血腫(脳出血):視床出血 –

 

視床出血とは

 

 

視床出血2-1 視床出血(水頭症)-1

小さな視床出血(左) と 脳室内穿破(矢印)と軽度の水頭症を伴った視床出血(右)

 

 

血腫の主座が視床にある出血を視床出血と呼びます。視床は、被殻よりもやや後ろで、内側にあります。視床は、内包、中脳(大脳脚)、脳室と接していますが、視床自体は比較的小さいので、出血が大きくなると容易にこうした部位に出血が及びます。

 

 

原因は

 

 

被殻出血と同様、視床出血の多くについて、高血圧による微小動脈の動脈硬化が原因と考えられます。稀に、別の何らかの原因によることもありますが、殆ど高血圧性のものと考えてよいでしょう。出血源となる血管は、視床を灌流する穿通枝と呼ばれる極めて細い血管です。

 

 

症状は

 

 

視床は、脳の中のネットワークの核をなす要所です。感覚線維を始め様々な線維がここを経由してネットワークを形成しています。そして、視床という小さな脳組織は機能解剖学的にいくつもの核に細分類されています。とりわけ、小さな出血では感覚障害を起こしやすいのですが、これは視床の後外側腹側核(VPL核)に障害が及んだためと考えられます。

 

視床の感覚障害としては、当初は感覚低下などを起こしますが、慢性期になると視床痛という半身の痛みを伴うようになることがしばしばあります。

 

出血が視床を超えて前方へ大きくなると、内包が障害され、反対側の手足の麻痺が起こるようになります。実際、視床出血の多くは麻痺により気づかれることが最も多いのです。また、下方に伸びて中脳の大脳脚へ延びても同様に麻痺が生じます。

 

出血がある程度大きくなり、脳が歪むようになると、被殻出血と同様に意識障害を伴うようになります。また、あまりにも大きい場合にはやはり生命の維持に関わります。

 

視床出血の特徴の一つとして、脳室と接しているため、脳室内に出血が進展しやすいということが挙げられます。正常の脳室には、脳脊髄液が充満しています。脳脊髄液は脳室内で産生され、脳室内から流れ出ていきますが、血液が脳室内に流出(脳室内出血)すると脳室内で凝固し、脳脊髄液の流れを阻害します。すると、脳脊髄液が脳室の中で停滞・貯留して、結果的に脳室が拡大します。拡大した脳室は周辺の脳組織を圧迫します。これを水頭症と呼びます。水頭症は、単独で意識障害の原因となります。しばしば、視床出血は小さいのに水頭症のために意識障害に陥ることがあります。
出血が広く中脳に及び、更に中脳の機能が阻害されるようになると、これも意識障害の原因となり、時として致命的です。

 

その他、視床出血では目の動きにも異常が出現し、目線が鼻の頭を睨むようになったり、縮瞳したり、対光反射が鈍くなったりすることがあります。

 

左側(脳の優位半球;利き手と反対)の出血の場合、言語機能障害を伴うこともあります。

 

 

検査と診断

 

 

視床出血についても他の出血と同様で、CTが最も有用です。CTでは、血腫は白く映ります。CTでは、出血の伸展の方向や伸展の程度、大きさ、脳室内出血の有無などを評価します。これにより、障害や予後予測の参考とします。

 

MRIでも診断は可能です。出血の存在部位や広がりに関する情報は得られます。また、他の部位に新旧の小さな出血がないかどうかなども調べることは可能ですが、通常は視床出血の急性期に無理に行うメリットはないでしょう。

 

脳血管造影検査:視床出血の場合、特に脳血管の奇形を強く疑う必要がなければ、行いません。

 

 

治療は

 

 

視床出血そのものに対して、基本的に手術は行われません。その理由は、一つには視床が脳の深いところに位置し、到達が容易でないこと、また一つには視床という小さな部位に沢山の機能が詰まっており、手術により視床の機能を回復できないばかりか視床の機能を更に損なう可能性があり、手術によって患者さんの状態の改善が得られないと考えられているからです。

 

例外はあり、脳室内出血に伴う水頭症に対して脳室外ドレナージという手術を行うことがあります。これは、頭蓋骨(通常、前頭骨)に小さな孔を開け、ここから脳室内に向けてカテーテル(チューブ)を挿入して、脳室内に過剰に貯留した脳脊髄液を体外へ流出させます。これにより、水頭症の進行を抑制します。

 

手術を行う、行わないに限らず、治療の中心は点滴、栄養管理、リハビリになります。主な点滴は、降圧剤、止血剤、脳圧降下剤などの投与になります。

 

栄養管理は重要で、十分な栄養補給がなされないと体力や免疫力の低下に繋がりますので、経口摂取ができない場合には積極的に経鼻経管栄養を行うべきです。また、長期に栄養の経口摂取ができないような状況では、主治医から胃瘻造設を勧められるかもしれません。その他、多くの患者さんでは片麻痺が生じますので、止血が完成し、全身状態が安定すれば直ちにリハビリを開始すべきです。高度の片麻痺に対するリハビリは、半年程度続く場合があります。

 

 

予後は

 

 

視床出血後の予後は、出血の程度と範囲によって大きく異なります。

 

発症直後に非常に軽い症状で、その後に血腫の増大がなければ、大きな後遺症は残りません。ただ、発症後から感覚障害があれば、感覚鈍麻の症状が残ったり、逆に半身の痛み(視床痛)が出現したりします。

出血がそこそこ大きい場合には血腫が内包に及んで片麻痺を伴い易いので、後に後遺症として残ることがしばしばあります。

 

脳室内出血による水頭症を伴っている場合には、その程度と治療に対する反応次第ではありますが、意識状態や認知機能の回復に影響があるかもしれません。

 

出血が中脳に及ぶような大きなものであれば、意識の回復が悪かったり、生命の危険を伴う可能性が高くなります。

 

 

 

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