脳の病気まるわかり

– くも膜下出血 原因・症状 –

 

くも膜下出血とは

 

 

くも膜下出血とは、脳を包み込んでいるくも膜という膜の下に出血した状態を言います。

 

くも膜の下ということは、脳の表面ということになります(厳密には、脳の表面に軟膜があるので、その更に上になります)。つまり、脳の表面に血が出た状態とご理解ください。

 

 

くも膜下出血の原因は

 

外傷性と非外傷性

 

くも膜下出血の原因を、病態と治療の面から大きく2つに分けて考えると、外傷性非外傷性に分けられます。

 

外傷性くも膜下出血は、事故などで頭部を強く打撲した際に脳表の血管の一部が損傷して出血した状態です。出血の程度は軽いことが多く、再出血などもそうそうあることではないので、保存的治療(経過観察)で良いことが大多数です。

 

 

非外傷性くも膜下出血

 

非外傷性くも膜下出血は、明らかなきっかけもないのに突然出血を起こすものであり、しばしば重篤な病状を招いたり繰り返し出血するなどのことから、原因精査と集中治療が欠かせない状態です。

 

非外傷性くも膜下出血の原因のうち大多数を占めるのが、脳動脈瘤の破裂によるものです。脳動脈瘤とは、脳血管の一部が風船やコブのように異常に膨らんだ状態であり、主に脳の太い血管に出来ます。脳の太い血管とは、具体的に言うと、内頚動脈や前大脳動脈、中大脳動脈などのほか、時に椎骨動脈、脳底動脈とその分枝血管などです(参照:脳動脈瘤の好発部位)。誰にでもあるような極めて太い血管のため、全て名前がついています。

 

このような太い血管は全て脳の内部ではなく、脳の表面を走行しています。ですので、こうした血管から出血を起こすと、脳内出血ではなく、くも膜下出血になるのです。

 

非外傷性くも膜下出血の約9割を占めるのが脳動脈瘤の破裂ですが、その他の脳の主要な血管の異常はくも膜下出血の原因となりえます。例えば、脳動静脈奇形や一部の脳腫瘍からの出血によるものもあります。ただ、どうしても原因がわからないこと(原因不明; unknown etiology)もあります。

 

 

脳動脈瘤の成因・くも膜下出血の機序は

 

 

嚢状動脈瘤

 

では、何故脳動脈瘤ができるのか。それには複合的な要因が関与していると考えられています。脳の血管のうち、脳動脈瘤が出来るところでは、脳血管の壁を構成する3層構造の中の一つである中膜が欠損していることが知られています。ここに強い血流がもろに衝突すると、血管の壁が血圧に耐え切れずに内弾性板の断裂が生じ、膨らんでしまうのです。このタイプの動脈瘤を、嚢状動脈瘤と呼びます。

 

■筋型動脈:全身に広く存在する動脈。血管壁は、内膜(内皮細胞と少量の内皮下結合組織からなる)、中膜(厚い平滑筋の層)、外膜(結合組織繊維からなる)の3層からなる。内膜と中膜の境には著明な内弾性板が、外膜の内側部には外弾性板が存在する。頭蓋内の血管は、こちらに該当する。但し、頭蓋内血管では外弾性板が欠如している。

 

■弾性型動脈:心臓からの血液を筋型動脈に導く動脈。大動脈、肺動脈、および大動脈から起始する腕頭動脈、総頚動脈、鎖骨下動脈、総腸骨動脈など。壁の構成要素として弾性線維が非常に豊富なため、心臓から拍出される血液の強い圧力に耐えるとともに、自らの収縮により、血液を遠位に送る。

 

中膜の欠損した部位は、血管の分岐部にあります。つまり、枝分かれのところです。枝分かれのところは、血流が直接血管の壁にぶつかるところでもあります。ですので、ちょうど血管壁が脆弱なところにもろに血流が衝突してしまった結果として生じるのが、脳動脈瘤です。

 

中弾性板の断裂によって生じた小さな脳動脈瘤は次第に大きくなり、血管壁が薄くなり耐えられなくなるとある日突然破裂を起こすのです。ちょうど、膨らんだ風船が突然破れるのと同じです。ちょっと違うのは、脳動脈瘤が破れた場合、しばらくの間出血を続けますが、いずれ止まります。止まらなければ死んでしまいます。破裂した後、風船はしぼんでしまいますが、脳動脈瘤はしぼまずに、やや形態を変えながらも同じように存在しています。出血したところは、かさぶたがついて一時的に止血されています。一時的な止血であり、動脈瘤が消失したわけではありませんので、近い将来、いつ再破裂してもおかしくないのです。

 

 

その他のタイプの動脈瘤

 

脳動脈瘤は、他の原因でできることもあります。血管壁を構成する内弾性板が急激に広範な断裂を生じ、血流が中膜内に侵入して偽腔(本来血流が通るところではないところに血流が通る)を形成するものが解離性動脈瘤です。断裂した血管壁により正常な血管壁が閉塞すると脳梗塞を生じ、断裂が外膜に達するとくも膜下出血を生じます。

 

菌の感染が原因で生じるのが真菌性動脈瘤です。実際には、このタイプには細菌性のものと真菌性のものがあります。感染の血管壁への波及によるものが多いようです。

 

こうした動脈瘤は特殊な例と思ってください。

 

 

くも膜下出血の症状

 

 

一度くも膜下出血を起こすと、大抵の場合は激烈な症状を伴います。軽いくも膜下出血で済んだ場合の症状は、激しい頭痛です。どのくらい激しいかというと、これまでに経験したことがないくらい激しい頭痛です。特徴は、ある日、○時○分、△△をしているときに突然、頭が痛くなったと分かるくらいに突然始まることです(参照:くも膜下出血による頭痛)。

 

朝方に多い傾向がありますが、朝ばかりとは限りません。ちょっと変わったパターンですが、排便中や、性交時などといった例もしばしばあります。朝に多いのは、起きて活動を開始したばかりに血圧が急に上がるためです(モーニングサージと言います)。排便中やセックス中にも、力んで脳の血圧が高まるのでしょう。

 

季節としては、いろいろと言われますが、私の印象としては季節の変わり目に多い印象があります。急に熱くなったり寒くなったりして、気温や気圧の変動が激しい状態ではくも膜下出血が起こりやすいと考えています。

 

 

出血量が少ない場合の症状に注意

 

さて、くも膜下出血の頭痛は極めて激しいとお話ししました。ところが、出血量があまりにも少ないと、患者さんが我慢できる程度の軽い頭痛のこともあります。頭痛というと、内科を受診される方も多いと思います。くも膜下出血の患者さんでも、重症度が比較的軽い人は歩いて内科クリニックを受診します。ところが、内科クリニックにはCTやMRIがありませんので、頭痛薬をもらって帰るだけです。このように、軽いくも膜下出血は見逃されがちだと言えます。ところが、後述しますが、くも膜下出血は見逃してはならない病気なのです。

 

症状が進行すると

 

ここまで頭痛の話を中心に進めてきました。しかし、頭痛で受診される患者さんは、症状が比較的軽い患者さんです。病状が進むと意識状態が悪化します。中等度の患者さんは傾眠から混迷状態(意識がもうろうとしている状態)、となります。更に出血が多くなると昏睡状態(深い眠りの状態)となり、究極的にはお亡くなりになってしまいます。

 

 

くも膜下出血の重症度分類:

 

Hunt & Kosnik分類

 

Grade 0 未破裂の動脈瘤
Grade I 無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる
Grade Ia 急性の髄膜あるいは脳症状をみないが、固定した神経学的失調のあるもの
Grade II 中等度から強度の頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみ
られない
Grade III 傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの
Grade IV 昏迷状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害
を伴うこともある
Grade V 深昏睡状態で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示すもの

 

 

WFNS(World Federation of Neurological Surgeons)分類

 

I GCS 15点、局所神経症状なし
II GCS 13-14点、局所神経症状なし
III GCS 13-14点、局所神経症状あり
IV GCS 7-12点
V GCS 3-6点
※ GCS:Glasgow coma scale

 

 

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