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– くも膜下出血 脳動脈瘤の好発部位 –

 

脳動脈瘤の好発部位

 

 

脳動脈瘤には、出来やすい部位(好発部位)があります。基本的には、太い動脈の分岐部や、太い動脈から細い動脈が枝分かれする部位に出来ます。

 

代表的な部位として、

 

前方循環系

 

(内頚動脈の流れ)

 

内頚動脈(中枢側から海綿状脈動部、眼動脈分岐部、床上部、後交通動脈分岐部、前脈絡叢動脈分岐部、先端部)
前大脳動脈(前交通動脈近傍、末梢部)
中大脳動脈(分岐部、末梢部)

 

後方循環系

 

(脳底動脈の流れ)

 

椎骨動脈(後下小脳動脈分岐部など)
脳底動脈(本幹、上小脳動脈分岐部、先端部、前下小脳動脈)

 

 

などがあります。

 

脳血管系の解剖については、こちらをご参照ください。

 

 

内頚動脈系の動脈瘤

 

内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(IC-Pcom動脈瘤)

 

内頚動脈系の動脈瘤の代表は、内頚動脈から後交通動脈が分岐する部位です。脳動脈瘤全体の25~30%を占めます。内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(IC-Pcom動脈瘤)です。くも膜下出血の原因としても頻度の高いものです。

 

 

全体の側面図と、拡大図

 

 

この部位の動脈瘤のもう一つの特徴は、そこそこの大きさになると破裂前でも症状を出すことがある点です。どのような症状かというと、それは動脈瘤の存在する側の眼の眼球運動障害と眼瞼下垂(瞼が開かない)です。これは、動脈瘤の近傍を走行する動眼神経が動脈瘤に圧迫されて麻痺することによります(動眼神経麻痺)。眼の動きとしては、実際には外側以外の全方向を見ることができなくなります。その他、瞳孔が散大したままとなって光を当てても小さくならなくなります(散瞳・対光反射の消失)。これは、動脈瘤が増大していることを示すものです。準緊急手術の適応になります。

 

動脈瘤による圧迫が原因の場合、動眼神経の中でも、瞳孔の調節機能の障害が先に生じる場合が多いとされます(内眼筋麻痺)。他に、動眼神経麻痺として有名なものに、糖尿病に伴うものがあります。この場合の動眼神経麻痺は、眼球運動障害、眼瞼下垂といった外眼筋麻痺が先行する場合が多いとされます。

 

内眼筋を支配する神経は動眼神経の外側を、外眼筋を支配する神経線維は動眼神経の内側を走行しています。動脈瘤は動眼神経を外側から圧迫するので、外側を走行する神経線維から影響をうけ、内眼筋麻痺が生じます。

 

 

内頚動脈のその他の動脈瘤

 

内頚動脈先端部の脳動脈瘤は、内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に分かれる部位に出来ます。時々見受けられるもので、治療に際しては先端部近傍から脳に出ていく穿通枝というとても細い血管の脳梗塞を起こさないようにできるかがポイントになります。

 

前脈絡叢動脈は、後交通動脈よりも末梢側にあります。比較的細い血管です。この部位の、内頚動脈-前脈絡叢動脈分岐部動脈瘤はそれ程多くありません。ただ、治療に際して、細い前脈絡叢動脈の血流障害が起こると脳梗塞となり、手足の麻痺が生じますので、十分な備えと注意が必要です。

 

後交通動脈より近位部に出来る、内頚動脈床上部の動脈瘤には、様々なものがあります。まず、内側下向きの動脈瘤は、上下垂体動脈という小さな血管の分岐部であることが多いです。一方、上向きの動脈瘤は非常に大きくなることがあります。その他、この部位の動脈瘤には血豆状動脈瘤といってごく小さくて平べったい動脈瘤でも破裂しやすく、また治療がとても困難な動脈瘤があります。なお、この部位の動脈瘤は基本的には硬膜内(つまり脳の入ったスペース)にありますので、くも膜下出血の原因となりえます。

 

眼動脈分岐部の動脈瘤は多くはありません。しかし眼動脈そのものが頭蓋内に入ってすぐに枝分かれする血管なので、この部位の動脈瘤は硬膜内にあるのか、それとも硬膜の外側にあるのかの判断が治療の分かれ目です。硬膜の外にあればくも膜下出血を起こすことはないので、予防的な治療の必要はありません。

 

海綿状脈洞部の動脈瘤は、頭蓋骨のうち脳が入っている部分の外にあるので、破裂してもくも膜下出血にはなりません。この部位の動脈瘤が破裂すると、内頚動脈-海綿状脈動瘻という病気になり、頭痛が生じたり、眼が腫れたり、眼の動きがおかしくなってものが二重に見えたりするようになります(内頚動脈-海綿状脈動瘻)。

 

 

前大脳動脈系の脳動脈瘤

 

 

この部位の脳動脈瘤の大部分は、前交通動脈に関連して発生します。脳動脈瘤全体の30~40%と最も多いものです。比較的小さな3mm程度の動脈瘤でも破裂しやすいので、予防的治療に関しては積極的に行った方がいいかもしれません。ただし、この部位に到達するのはそれほど容易なものではありませんので、安易に考えるものでもありません。

 

 

 

 

前大脳動脈のうち、前交通動脈よりも中枢側(内頚動脈側)に動脈瘤が発生することは比較的稀です。

 

一方、前交通動脈よりも末梢側には動脈瘤が時々発生します。この部位の動脈瘤の特徴としては、手術の際に動脈瘤を見つけるのが案外難しいことですが、慣れた術者が行えばそれほど問題にはなりません。その他、この部位の動脈瘤の中には、形の問題から開頭によりクリップを掛けることや、血管内治療によりコイルを挿入することが難しいことがあり、その場合にはバイパス血管を用いた特殊な手術を行う必要が出てくるかもしれません。

 

 

中大脳動脈系の脳動脈瘤

 

 

脳動脈瘤全体の25%程度を占めます。この部位の動脈瘤の大部分は中大脳動脈が最初に2つの太い血管に分かれるその分かれ目です(中大脳動脈分岐部)。比較的破裂しにくいもののようです。比較的脳の表面に近いところにあるので、開頭によりクリップを掛ける手術に向いています。

 

 

 

 

分岐部よりも中枢側(内頚動脈側)では、しばしば穿通枝と呼ばれる中大脳動脈から出る血管の枝に出来ることがあります。この部位の脳動脈瘤は、穿通枝を温存しながら治療することが重要で、穿通枝の血流が悪くなると脳梗塞を起こして手足の麻痺が生じる危険があります。

 

分岐部よりも末梢側にはあまり動脈瘤はできません。時に、様々な原因により比較的若い患者さんで見かけることがあります。破裂して発見されるケースが大多数を占め、時に複雑な治療を要します。

 

 

椎骨動脈・脳底動脈の動脈瘤

 

 

脳動脈瘤全体の約10%を占めます。

 

椎骨動脈の脳動脈瘤には2種類あります。

 

一つは、特殊なタイプの動脈瘤で、解離性脳動脈瘤と呼ばれるものです。これは、通常の、嚢状動脈瘤とは発生機序が異なります。壮年男性に多いもので、くも膜下出血を起こす場合と脳梗塞を起こす場合とがあります。

もう一つは、椎骨動脈と後下小脳動脈の分岐部や後下小脳動脈の末梢に発生する嚢状動脈瘤です。この部位の脳動脈瘤は比較的稀なものだと思われます。

 

脳底動脈瘤そのものはそれ程多くはありません。その中の好発部位は、先端部です(脳底動脈先端部動脈瘤)。しばしば、大きくなって発見されます。この部位の動脈瘤に対して、開頭によりクリップをかける手術はとても難易度の高いものです。ですので、最近では血管内治療によりコイルを挿入する手術が主流だと思われます。

 

 

脳底動脈先端部動脈瘤(白矢印)、黒矢印は内頚動脈瘤

 

 

上小脳動脈との分岐部に発生する動脈瘤は比較的稀ですが、案外有名です。その理由は、この部位の動脈瘤は内頚動脈-後交通動脈瘤と同じく、動眼神経麻痺を起こすことがあるからです。

 

前下小脳動脈の動脈瘤は、個人的な経験では末梢に多い印象です。といってもこの部位の動脈瘤自体が稀です。末梢脳動脈瘤は開頭手術により見つけるのも容易ではありません。開頭手術でも治療できるかもしれませんが、血管内手術も有用であり、むしろその併用によるハイブリッド手術の有用性が高いかもしれません。

 

脳底動脈自体は、時として血管全体が異常に膨らんで動脈瘤様になります。脳を圧迫するほどになると治療を受けざるを得ないかもしれません。ただ、治療自体は容易ではありません。

 

 

 

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