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– くも膜下出血 脳動脈瘤コイル塞栓術(血管内治療) –

 

血管内治療によるコイル塞栓術

 

 

 

とても細いカテーテルを用いて、血管の内部から脳動脈瘤を詰めてしまう治療法です。脳血管造影検査(カテーテル検査)の応用です。

 

全身麻酔で行う場合と、局所麻酔で行う場合とがあります。非常に細かい操作ですので、患者さんの体の動きは極力避けなければならず、全身麻酔の方がより安全だと思われます。

 

 

治療の流れ

 

通常は、足の付け根(鼠蹊部)を通る大腿動脈からカテーテルを挿入し、動脈内を通じて脳内の血管までカテーテルを誘導します。

 

実際には、頚部の内頚動脈までは通常のカテーテルを挿入し、その先からマイクロカテーテルと呼ばれる極細のカテーテルを、脳内の血管を通じて脳動脈瘤の内部に誘導します。そして、その先端からは人工的なコイル(金属コイルなど)をゆっくりと動脈瘤内に出していきます。数本のコイルを用いて、1本ずつ脳動脈瘤内を充填していきます。その際、適宜脳血管撮影検査を繰り返し、脳動脈瘤の見え方をチェックします。追加のコイル挿入時にカテーテルが押し出され、それ以上コイルが入っていかなくなったところが治療終了の目安です。最終の脳血管造影検査で、脳動脈瘤の全体にわたり、造影剤が入らなくなったことを確認できれば、治療は終了になります。

 

通常、コイルは脳動脈瘤の中にぎちぎちに詰めるのではなく、20~30%の容積充填率で十分に動脈瘤が造影されなくなります。そして、血流が入らなくなり、動脈瘤は血栓化してしまいます。

 

 

コイル塞栓術における工夫の例

 

時に、動脈瘤の基部(動脈瘤頚部と言います)が広いタイプの動脈瘤では、コイルが動脈瘤からはみ出してしまってうまく留置できない可能性があります。そこで、近年では風船付きのカテーテルで動脈瘤の入り口を覆いながら、コイルを動脈瘤内に挿入する方法がしばしば用いられます。また、動脈瘤の内部にコイルを安定させるために、動脈瘤前後の親血管にステントを挿入することがあります。

 

脳動脈瘤の塞栓に用いるコイルには、各メーカーがそれぞれのアイデアに基づき創意工夫をされたものが豊富に用意されています。また、1種類のコイルにも、形や長さやコイルの巻き方の大きさにはバリエーションがあります。

 

 

 

コイル塞栓術の特性

 

傷も小さくて済むので、うまくいった場合には、開頭手術よりも低侵襲です。患者さんへの負担は少なく、高齢者や全身の合併症を持った方にも対応しやすいと言えます。

 

動脈瘤の部位としては、椎骨動脈・脳底動脈などの動脈瘤に対して、多くの場合に適しています。その他、内頚動脈の動脈瘤にも適しています。前交通動脈瘤にも用いることが可能ですが、中大脳動脈瘤の場合にはクリッピング術の方に利があるようです。

動脈瘤の基部が相対的に広い動脈瘤の内部には、コイルを留置することが困難です。また、余りにも小さな脳動脈瘤や逆にあまりにも大きな脳動脈瘤に対しては、向いていないと思われます。

 

破裂してくも膜下出血になり、更に脳内血腫を伴っている場合には、開頭手術をお勧めします。

 

 

コイル塞栓術における合併症・危険性

 

 

正常の動脈が詰まってしまい、脳梗塞を生じる危険性があります。

 

カテーテル操作や、自然な経過で、術中に脳動脈瘤が再破裂して出血する可能性があります。その場合、コイルを詰めてしまって止血が得られればいいのですが、止血されない場合には処置が追い付かず、大きな危険性もあり得ます。

 

コイル塞栓後暫く(数か月以上)して脳動脈瘤とコイルとの間に隙間ができてしまうことがあります。ですので、初期治療がうまくいっても、その後にMRIや脳血管造影検査を行い、定期的にチェックを受ける必要があります。その他、まだ新しい素材のものばかりで長期的な経過が分かっていませんので、人工物質が数十年以上の長期にわたり動脈瘤や人体に与える影響があるのかないのかについてはわかっていません。

 

ステントを併用した場合には、脳血栓を予防する必要が出てきます。そのため、抗血栓薬を長期に渡って内服しなければなりません。それに伴い、脳や全身の出血が起こりやすくなったり、血が止まりにくくなったりすることがあります。また、大きな外科手術を行う時、薬を中止するかどうかが問題になります。

 

 

カテーテル操作による合併症

 

その他、カテーテル操作そのものに関する合併症もあります。

例えば、足の付け根に比較的太いカテーテルを挿入するので、手術が終了してカテーテルを抜去した後にしばらくして出血が止まらなくなり、大きな皮下出血が出来たり、追加処置が必要になることがあります。

 

また、カテーテルを誘導している間に、カテーテルが通る経路の血管壁を損傷して、血管が裂けたり出血したり、血管壁の動脈硬化性物質が末梢へ飛んで脳梗塞を作ることもあります。

 

造影剤によるアレルギーの危険性もあります。軽い場合には、蕁麻疹や微熱などで済みますが、重篤な場合には血圧が低下してショック状態になります。

 

 

 

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