脳の病気まるわかり

– 乏突起神経膠腫 –

 

乏突起膠腫とは

 

 

CT

 

FLAIR MRI

 

造影MRI

 

 

 

乏突起膠腫は、脳の神経膠細胞(グリア)と呼ばれる細胞から発生する腫瘍(グリオーマ、glioma)の一種です。星細胞腫瘍とは類縁関係です。

 

脳は、主に思考や感情に関わる神経細胞(ニューロン)と、神経細胞の活動を支えている神経膠細胞(グリア)から成りますが、そのうち、乏突起膠細胞(oligodendroglia)が腫瘍化したものが、grade 2の乏突起膠腫とgrade 3の退形成性乏突起膠腫です。

 

頻度としては、原発性脳腫瘍の約1~2%を占めます。Grade 2の方が多いです。

 

原発性脳腫瘍の約2%を占める。発症年齢は30歳代から60歳代にピークがあり、性別では男性に多いです。

 

乏突起膠腫は、主として成人の大脳から発生する脳腫瘍で、そのうち半数以上が前頭葉を中心とした部位発生します。脳幹,小脳半球や脊髄,髄膜を中心に発生したものなどの報告もあります。小児でも時々発生します。

 

 

乏突起膠腫の症状は

 

乏突起膠腫は、脳のいろいろなところに発生し、発生した脳の部位により、症状は異なります。

 

大脳半球のどこに発生しても最も多い症状はけいれん発作(症候性てんかん)です。けいれん発作は、前頭葉の腫瘍では、片方の手足の部分けいれんが主で、側頭葉の腫瘍であれば,幻覚や自動症などの精神運動発作が多い傾向です。

 

頭痛や性格変化も多いとされています。その他、脳の発生部位により異なる症状として、半身の麻痺や言語障害、半盲、精神症状などがあります。その他、脳の中でも特定の機能が出にくい部位に発生した腫瘍の場合は頭痛も起こりえます。腫瘍が増大すると、意識障害に至り、死亡してしまいます。

 

 

乏突起膠腫の診断は

 

診断には、脳のCTMRIが有用です。CTでも多くの場合は異常が出現します。造影剤を使用しない単純CTでは、脳の一部が不整な形で低吸収に(黒っぽく)映りますが、その中に白っぽいところがあると、それが石灰化というものかもしれません。乏突起膠腫は石灰化を伴う腫瘍です。一方、極端に黒いところがあれば、それは液体の入った袋、つまり嚢胞かもしれません。石灰化は、70%以上にあり、嚢胞は20%にあります。

 

T2強調画像やFLAIR画像といった、造影剤を使用しないMRIでは、正常とは異なり白くなっている部位が広がっています。
造影剤を使用したCTやMRI検査も重要です。乏突起膠腫の場合、grade 2であって不均一に僅かに造影剤が入っていくことがあります。ですので、僅かに造影剤が入っていても悪性のものとは限りません。

 

石灰化を伴っているような乏突起膠腫の場合には、他の石灰化を伴うような病変との鑑別が必要になります。神経節細胞腫や上衣腫などは比較的稀ですが、石灰化を伴います。

 

神経膠腫の疑いがある場合には、CTやMRIのほかにPET検査も受けることになるかもしれません。PETには、保険適応のある糖代謝PET(fluorodeoxy glucose (FDG))をもちいたFDG-PETと、保険適応外の疎水性アミノ酸を用いたmethionine(メチオニン)-PETとがあります。両者とも、神経膠腫に対して有用な検査ですが、メチオニンの方が感度は優れているようです。

 

確定診断には、他の腫瘍と同様で、腫瘍の病理組織診断が必要です。

 

乏突起膠腫の場合、分子マーカーとしてIDH遺伝子変異と1p/19q染色体の欠失が診断に重要です。IDH遺伝子変異は80~90%にみられます。1p/19q染色体の欠失は60~70%にみられ、本所見を有する腫瘍では、放射線療法や化学療法に対する反応性がよく、予後のよい指標とされています.一方、腫瘍抑制遺伝子であるCDKN2A gene (9p21)の欠失、PTEN遺伝子の変異(10q23)、EGFR遺伝子増幅(7p12)は乏突起膠腫の予後不良因子として報告されています。その他、TERT遺伝子変異やTP53変異もしばしばみられます。

 

なお、分子マーカーによる診断は、悪性脳腫瘍を多数扱っている専門の施設でしか行うことができません。

 

 

乏突起膠腫の治療は

 

乏突起膠腫の場合の治療は、星細胞腫瘍とやや異なります。

 

手術による摘出が重要であることは、星細胞腫と同じです。それも、出来るだけたくさん腫瘍を摘出することが重要だと言われています。

 

手術の他の治療には、放射線治療や抗がん剤による治療もしくはその組み合わせが有効です。ただ、抗がん剤にも選択肢が2つあり、どちらが優れているのかについてはまだ結論が出ていません。

 

一つは、星細胞系の腫瘍と同じくテモダールによる治療です。もう一つは、PCV療法と呼ばれる3種類の抗がん剤を組み合わせた方法です。本来、PCV療法に使う3つの薬は、プロカルバジン、ロムスチン(CCNU)、ビンクリスチンですが、日本ではロムスチンが使用できないので、代わりに類似薬のニドラン(ACUN)を使用しています(PAV療法)。最近は、PAVのなかでもACNUの効果に期待して、ACNU単独で治療している施設も多いようです。

 

Grade 2の場合には、腫瘍をほぼ摘出することが出来たら、追加治療を行わずに経過観察されることが多いです。この場合は、定期的なMRI検査が必要です。取り残した部分が多い時には、放射線や抗がん剤による治療を行います。1p/19q染色体欠失があると、抗がん剤の効果が期待できますので、抗がん剤の治療が適していると言えます。

 

Grade3の場合、手術で可能な限り多くの腫瘍を取りますが、術後には放射線治療と抗がん剤(PAV療法もしくはテモダール)による治療を行います。テモダールを使用するか、PAV療法を行うかについては、どちらがより効果があるのか決着はついていませんが、副作用の面からテモダールを使用する施設の方が多いようです。

 

 

経過、予後は

 

Grade 2のものについては、5年生存率は約80~90%あります。Grade 3の腫瘍では5年生存率は約40%に下がりますが、grade 3であっても1p/19q染色体欠失があればかなり長期の経過が見込めるようです。Grade 2で、1p/19q染色体欠損が存在する場合には10~15年以上の長期生存が期待できます。放射線や化学療法を行ったほうが経過は良いという報告もあります。

 

最後になりますが、乏突起膠腫の診断は非常に特殊で、なおかつ治療には専門的知識が必要ですので、悪性脳腫瘍を多数取り扱っている施設での治療を強くお勧めします。

 

 

 

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