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脳実質内腫瘍

 

脳実質内腫瘍:脳の内部から発生する腫瘍

 

頭蓋骨の中にできる腫瘍を総じて脳腫瘍と呼びますが、脳の内部に発生する腫瘍を脳実質内腫瘍と呼びます。脳実質内腫瘍は脳の細胞から発生します。非常にバリエーションが豊富で数十種類もあり、しかも近年でも新たな分類の追加が時々あります。

 

 

脳腫瘍の分類(脳実質内腫瘍)

 

脳腫瘍の総論で書きましたように、原発性脳腫瘍は低悪性度のものから高悪性度のものまでgrade 1~4に分類されます(下記)。
原発性脳腫瘍とは、脳に発生起源があるという意味でして、この対義語として転移性脳腫瘍があります。転移性脳腫瘍については別に記すこととします。

 

 

症状は発生部位により多様

 

症状は、腫瘍の悪性度と発生部位によって異なります。

 

簡単に述べると、部位にあまり依存しない症状として軽い頭痛てんかん発作があり、そして腫瘍の進行もしくは合併する水頭症(続発性水頭症)に伴う症状として意識障害瞳孔不同などがあります(参照:脳ヘルニア)。

 

病変の存在部位に依存する症状は、脳の機能分布と関係します。

 

例えば、前頭葉の前のほうだと、頭痛や頭重感、行動異常などで、優位半球(利き手と反対側)の言語中枢に及ぶと失語になります。前頭葉でも後ろの方(脳の中央部)になると対側の手足の運動障害(麻痺)が生じます。

 

頭頂葉では様々な種類の高次脳機能障害(書くことができない、左右を間違える、計算ができない、視野欠損(対側の下1/4盲、身体や空間の認識障害、服を着ることができないなど)や感覚の障害が生じます。

 

側頭葉ですと、視野欠損(対側の上1/4盲)、記憶力低下、失語症(優位半球の場合)などを生じます。

 

後頭葉では、半盲(腫瘍の存在と反対側の視野欠損)が主な症状になります。

 

大脳基底核や視床に発生した場合には、対側の麻痺が最初の症状になることが多いです。

 

脳幹に生じた場合には、対側の麻痺のほか、眼球運動障害(複視;ものが二重に見える)、病変側の顔面の運動感覚の障害、嚥下障害なども場所によっては生じます。

 

小脳であればふらつきが主な症状になります。

 

脊髄の場合には手足の運動感覚障害、排便や排尿の障害が生じます。

 

 

脳実質内腫瘍の治療(手術/放射線治療/抗がん剤)

 

脳腫瘍の治療は、腫瘍の種類によって異なりますので、ここでは一般的な話に限ります。

 

WHO grade 1の腫瘍であれば、開頭手術による切除が最も根治的な治療になります。悪性度の低い腫瘍には放射線や抗がん剤の有効性が低いことが多いので、あまりあてにはなりません。完全切除により治癒する見込みが極めて高いのですが、部位によっては切除により大きな後遺症を残す可能性もありますので、この辺りは主治医との相談になります。

 

もう一つの方法として、経過観察(wait & scan)する方法も大いにありだと思います。良性腫瘍の中には数年経過しても殆ど大きくならないものが多いですので、私の患者さんでも1~2回/年のペースでMRI検査のみを行って経過観察しているケースも多いです。

 

なお、注意事項として、悪性度が低い腫瘍だからといって舐めて考えていると、悪性化することがあります。私も若いころ、先輩医師が長年診ていた腫瘍の患者さんで、てんかん発作が増えてきたため手術したところ既にgrade 4の悪性脳腫瘍に変化しており、その1年後にはお亡くなりになってしまった患者さんがいらっしゃいました。低悪性度腫瘍として経過観察する際にも、こういうことが稀にあることだけは認識しておくべきでしょう。

 

WHO grade 2の脳腫瘍は、主にdiffuse astrocytoma(びまん性星細胞腫)と呼ばれるものになります。Grade 2の腫瘍に対しては開頭による全摘出が望ましいのですが、腫瘍が脳に浸み込むように進展していくこと、脳の機能温存が問題になることから、全摘出が困難なこともしばしばあります。その場合、病型に応じて放射線治療や抗がん剤による治療が選択肢になります。このあたりは、病型のみならず施設の方針によって変わるところもあります。

 

Grade 3と4の腫瘍に対する治療方針は、基本的に共通の部分が多いです。やはり、可能な限り全摘出を目指した方がいいのですが、全摘出することは難しいと思われます。これは、高度な手術手技が求められるというよりも、脳機能温存との兼ね合いという点であり、上手に手術したら機能が残せるという単純なものではありません。ほとんどの場合には腫瘍が残存しますので、残存した腫瘍に対しては放射線と抗がん剤を組み合わせた治療を行います。最近は、様々なタイプの抗がん剤が出現し、併用可能なものが多いので、組み合わせることで少しずつ平均余命が延びつつあります。

 

脳実質内腫瘍の生命予後は

 

これまで述べてきたように、一言に「脳腫瘍」言っても、その後に辿る道はケースバイケースです。ただ、脳腫瘍のgradeがあるのは、平均余命が似た者同士をグループ化しているということです。

 

WHO grade 1のものは10年を超える余命が見込める可能性が高いですし、そのまま歳を重ねて他の病気でお亡くなりになられるケースも少なくありません。

 

WHO grade 2のものであれば、診断を受けた時点から少なくとも5~10年程度の余命は見込めるでしょう。

 

WHO grade 3に至っては、平均すると3年程度になります。

 

そして、Grade 4になると1年半にも達しません(これでも昔に比べると延びてきた方です)。なお、この数字は飽くまで平均ですので、grade 4でも数週間でお亡くなりになられる方もいらっしゃれば、年余を超える長期生存の方も沢山いらっしゃいます。

 

 

参考資料:脳実質内腫瘍の分類(主な腫瘍のみです)

 

Grade 1:
pilocytic astrocytoma(毛様細胞性星細胞腫):小児に多い、比較的高頻度
subependymal giant cell astrocytoma(上衣下巨細胞性星細胞腫):結節性硬化症に伴い生じる
pleomorphic xanthoastrocytoma(多型黄色性細胞腫):小児~若年成人
subependymoma(上衣下腫):中高年で多い、おとなしい性質
choroid plexus papilloma(脈絡叢乳頭腫):乳幼児、少ない
ganglioglioma(神経節膠腫):小児から成人
gangliocytoma(神経節細胞腫):稀
desmoplastic infantile astrocytoma/ganglioglioma(DIA/DIG;線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫):乳幼児、稀
pineocytoma(松果体細胞腫):少ない
hemangioblastoma(血管芽腫):やや少ない

 

Grade 2:
diffuse astrocytoma(びまん性星細胞腫):高頻度、成人を中心に
oligodendroglioma(稀突起膠腫):中頻度、成人を中心に
ependymoma(上衣腫):小児~若年成人
atypical choroid plexus papilloma(非定型脈絡叢乳頭腫):稀(乳幼児)
central neurocytoma(中枢性神経細胞腫):若年成人、脳室内、少ない
pineal parenchymal tumor of intermediate differentiation(PPPID/中間型松果体実質腫瘍):比較的稀

 

Grade 3:
anaplastic astrocytoma(退形成性神経膠腫):grade 3の中で最多、主に成人
anaplastic oligodendroblioma(退形成性稀突起膠腫)
anaplastic ependymoma(退形成性上衣腫):比較的稀
choroid plexus carcinoma(脈絡叢癌):小児、稀
pineal parenchymal tumor of intermediate differentiation(PPPID/中間型松果体実質腫瘍):比較的稀

 

Grade 4:
gliobrastoma(グリオブラストーマ;神経膠芽腫):高頻度、成人~高齢者に多い
gliomatosis cerebri(神経膠腫症):成人、比較的稀(旧分類)
pineoblastoma(松果体芽腫):稀
medulloblastoma(髄芽腫):小児では少なくない
Neuroblastoma(神経芽腫):小児、少ない
Atypical teratoid/rhabdoid tumor(AT/RT):乳幼児、比較的稀

 

 

 

脳腫瘍 関連ページ

 

脳腫瘍とは
脳実質内腫瘍
– 星細胞系腫瘍(グリオーマ)、grade 2-4 –
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