脳の病気まるわかり

脳実質外腫瘍

脳実質外腫瘍のまとめ

 

脳実質外腫瘍とは、頭蓋内にはあるが、脳の外にあるものを指します。

 

厳密にいうと脳には接しているだけで脳そのものに腫瘍があるわけではないので、「脳腫瘍」という言い方に疑問もありますけど、実際にはそれで通っています。

 

頭蓋内には、脳そのもの以外に血管、硬膜、くも膜、末梢神経、脳下垂体、頭蓋骨などの諸組織が存在するので、こうした組織を起源とする病変は生じえますし、生物の発生起源に由来した腫瘍もあります。

 

分類(主なもののみ)

 

Meningioma髄膜腫(WHO grade 1~3)
Schwannoma神経鞘腫(WHO grade 1)
Pituitary adenoma下垂体腺腫
Craniopharyngioma頭蓋咽頭腫(WHO grade 1)
Chordoma脊索腫
Chondrosarcoma軟骨肉腫
Epidermoid類上皮腫
Hemangiopericytoma血管外皮腫(WHO grade 2)

 

脳実質外腫瘍の症状とは

 

脳実質外腫瘍の症状は、局所の脳神経(脳から顔面などへ向かう末梢神経)や脳下垂体などが障害されることによる症状、脳の圧迫に伴う症状(けいれんを含む)、水頭症に伴う症状などに分けられます。

 

脳実質外腫瘍が頭蓋底(脳の裏側)の局所で増大すると、近傍の脳神経を巻き込むようになります。脳神経は左右12対あり、運動系では顔面・眼球・舌・喉などの運動、感覚系では嗅覚・視覚・聴覚・味覚・顔面の触覚、その他涙や唾液の分泌などに関わります。脳腫瘍が脳神経を巻き込むようになるとこうした脳神経の機能が障害を受け、症状を呈するようになります。比較的強い神経と弱い神経があり、聴神経や視神経の症状は出現頻度が高いものです。

 

脳下垂体近傍の腫瘍(トルコ鞍部腫瘍)には下垂体腺腫のほか、頭蓋咽頭腫、髄膜腫、胚細胞腫瘍などがあります。この付近の腫瘍は、腫瘍の種類にもよりますが、下垂体機能障害(ホルモン分泌障害)を呈するようになります。
下垂体は解剖学的に前葉と後葉に分けられており、下垂体前葉ホルモンには成長ホルモン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモンがあり、下垂体後葉ホルモンには抗利尿ホルモンがあります。脳腫瘍により特に機能が低下しやすいホルモンとして抗利尿ホルモンがありますが、このホルモンが足りなくなると尿量が異常に増えて脱水状態になります(中枢性尿崩症)。
逆に、下垂体の腺細胞を起源とした腫瘍の一部では、ホルモンを過剰産生することがあります。

 

脳実質外腫瘍が増大して脳を圧迫するようになると、局所の脳機能が低下して反対側の手足の麻痺が出現しますし、更に圧迫が強くなると脳全体の機能が低下して意識障害を呈するようになります。

 

頭蓋底の脳腫瘍が増大する過程で、脳への圧迫が強くなって脳脊髄液の流出路が潰れてしまうようになります。そうすると水頭症(閉塞性水頭症)が起こります。水頭症になると頭痛や意識障害が起こります。なお、腫瘍から脳脊髄液の中に分泌されたタンパク質などが水頭症を誘発してしまうこともあります(交通性水頭症)。

 

脳実質外腫瘍の多くは頭蓋底(脳の裏側)にできます。一方、髄膜腫は脳を包んでいる膜のどこにでもできますので、脳の表面(円蓋部)にもしばしばできます。円蓋部の腫瘍は局所で増大して局所の脳機能障害を起こしえますが、最も多いのは圧迫されて痛んだ脳がけいれん(てんかん)を起こすことです。

 

脳実質外腫瘍の治療法は

 

腫瘍の病理組織分類によって異なります。

 

一般論として、上に列挙した腫瘍の大部分において、可及的全摘出が最も腫瘍コントロールに優れた結果になります。

 

但し、大きなものほど全摘出が困難になってしまいます。

 

神経鞘腫や頭蓋咽頭腫の小さなもの(<3cm)にはγナイフを初めとした放射線治療も有効ですし、脊索腫や軟骨肉腫に対しては重粒子線という放射線治療も効果が期待できます。

 

ですから、大きな腫瘍に対しては手術とこうした放射線治療を組み合わせることも選択肢と言えます。

 

一方、小さな腫瘍を外科的に中途半端に部分摘出するくらいなら最初から放射線治療に期待したほうがいいかもしれません。

 

なお、放射線治療における放射線は近傍の正常脳や脳神経にも照射されますので、脳の壊死や脳神経の麻痺が生じることもあります。

 

脳実質外腫瘍の予後について

 

腫瘍の種類と摘出率によって大きく異なります。

 

各論で詳しく述べたいところですが、いずれの腫瘍も全摘出を達成できれば長期生存が期待できるでしょう。

 

一方、良性腫瘍といえども部分摘出に終わり経過観察していると5年~10年以上の経過で再増大してきます。2回目の手術は1回目よりも状況が悪いことが多いので、2回目の手術で1回目の手術よりも結果がよいということは期待しがたいと思います。ですので、初回手術は極めて重要だと認識したほうが良いでしょう。

 

腫瘍の分類に関して、概説しますと、神経鞘腫と髄膜腫の大部分は良性の経過を辿りますが、頭蓋咽頭腫、脊索腫、軟骨肉腫、血管上皮腫は全摘出が困難だったり再発しやすかったりと、臨床的には良性と言えない面もあります。