脳の病気まるわかり

– 髄膜腫 –

 

髄膜腫(meningioma,メニンジオーマ)とは

 

髄膜腫とは、脳を包んでいる膜である、髄膜から発生した腫瘍を言います。

 

髄膜には、くも膜と硬膜があります。くも膜は、脳を覆っている薄い膜で、無色透明をしています。硬膜は、その外側にあり、骨と引っ付いている分厚い膜です。こうした膜組織から発生した腫瘍を髄膜腫と呼びます。

 

なお、実際にはくも膜の更に内側の脳表面には、軟膜があります。

 

脳実質外腫瘍の中では最も多く、脳腫瘍の20数%を占めます。女性でやや多い傾向で、中には多発する人もいます。

 

髄膜腫は基本的に良性腫瘍です。髄膜腫は顕微鏡で細胞を見た際の腫瘍の顔つきによって、15種類ほどに分かれています。実際に良性なのは(つまりgrade 1は)そのうちの9種類ほどですが、このgrade 1で全体の95%近くを占めています。Grade 2とgrade 3が3種類ずつありますが、これらは約5%を占めるにしか過ぎません。Grade 3が真の悪性です。Grade 1の中でもmeningothelial meningiomaが最も多い分類です。

 

 

髄膜腫の発生部位による分類

 

上述のように、髄膜腫は脳を覆う髄膜から発生します。髄膜は脳全体を覆っていますので、脳の表面の浅いところにもできますし、脳の裏側の面にもできます。脳表面にできる髄膜腫を円蓋部髄膜腫と呼びます。外科治療を考える際に、円蓋部髄膜腫は最も基本的な髄膜腫と言えます。

 

円蓋部髄膜腫

 

その他、発達部位別に、

 

脳の表面近くの正中にできるもの

 

傍矢状洞髄膜腫:「上矢状静脈洞(重要な静脈)」と接してるため、この静脈とその周囲の腫瘍をどうするかが手術のポイント。
大脳鎌髄膜腫:「上矢状静脈洞」に接していないが、より深いところにあり、静脈の温存と手前の脳の温存が手術のポイントになる。

 

大脳鎌髄膜腫(矢印は上矢状静脈洞)

 

頭蓋底にできるもの

 

嗅窩部髄膜腫:匂いの神経の温存が容易でない。
蝶形骨縁髄膜腫:深いところにあり、大きくなると内頚動脈や視神経を巻き込むため、手術が困難になる。
前床突起部髄膜腫:基本的に蝶形骨縁髄膜腫と同じ。大きなものでは区別がつかない。
鞍結節部髄膜腫:左右の視神経の間にあるので、視力温存がポイント。
海綿状脈洞髄膜腫:深いところの、しかも静脈の中にあるので、この部位に限局しているものは手術せずに経過観察するか、ガンマナイフ治療を受けるほうが無難。
斜台髄膜腫:脳の最も深いところにあり、手術で腫瘍に到達するのが困難。
錐体部髄膜腫:聴神経や顔面神経、迷走神経、舌咽神経などを巻き込むようになると手術難易度が高くなる。
テント髄膜腫:深い部位ではアプローチが容易でないことも。
大孔髄膜腫:延髄や椎骨動脈との位置関係や大きさによっては摘出困難なこともある。

 

蝶形骨縁髄膜腫

 


鞍結節部髄膜腫

 

特殊な部位にできるもの

 

脳室内髄膜腫:しばしば側脳室三角部にでき、正常脳を切らないと到達できないことが問題。
脊髄髄膜腫:脊髄を外から圧迫することにより症状を出す。
視神経鞘髄膜腫(眼窩内髄膜腫):手術により視力の低下は免れないため、手術のタイミングが難しい。

 

などに分かれます。

 

これは、発生部位を表すと同時に、手術の難しさと関係があります。上記の中でも、錐体骨と斜台との間に発生した錐体斜台部髄膜腫は脳の最も深いところで大きくなり、いろいろな脳神経や重要血管を巻き込んでいますので、最も治療困難な髄膜腫とされます。また、蝶形骨縁に発生した髄膜腫でも増大すると内頚動脈や視神経などの重要構造物を巻き込むようになりますので、手術が極めて困難なものも少なくありません。

 

錐体斜台部髄膜腫

 

 

髄膜腫の症状

 

髄膜腫の症状は、発生した部位により様々です。

 

脳表面に発生した場合には圧迫された脳が原因となるてんかん発作や、認知症のような症状、そして手足の麻痺などが出現します。

 

脳の深部にできると脳神経を巻き込むようになり、巻き込まれた脳神経の症状として視力視野の障害、顔面の感覚障害、聴力障害、ふらつきなどが出現するようになります。

 

 

髄膜腫の画像診断

 

髄膜腫の診断には、CTやMRIが有用です。殊に、造影剤を使用したCT/MRIは重要です。

 

髄膜腫は脳の表面の髄膜から発生しますので、髄膜との付着部はなだらかに見えます(dural tail sign)。脳の中ではなく外にできますので、画像でも脳を外から圧迫しているように見えます。造影剤が腫瘍によく入っていきますので、造影後のCT/MRIでは腫瘍は白っぽく見えます。

 

脳への圧迫が強くなると、脳そのものの見え方も変化するようになります。腫瘍が脳に癒着するようになり、脳軟膜が破られると、脳がむくんできて、CTでは正常脳よりも黒っぽく、MRIでも画像により白く見えたり黒っぽくなったりします。

 

髄膜腫は脳の表面にある腫瘍ですので、脳の外にある脳神経や脳血管を巻き込むようになりますが、高画質のMRIを用いると、こうした血管や神経が巻き込まれている様子も観察することができます。

 

髄膜腫では、しばしば頭蓋骨が反応性に分厚くなったり、逆に腫瘍により浸食されて薄くなったりします。

 

脳血管撮影検査(血管造影、アンギオグラフィー)を行うこともあります。髄膜腫では、硬膜から大量の血液が腫瘍に入っている状態を確認することができます。時に、手術前の治療として、こうした硬膜動脈を塞栓して血流を減らす治療を行うことがあります(塞栓術)。これにより、術中の出血を減らします。ただ、塞栓術を必要とするのは限られた症例のみです。

 

 

髄膜腫の治療

 

髄膜腫に対する最も優れた治療法は全摘出することです。付着している硬膜も切除しますし、骨に侵食しているようなら、骨の一部も削ります。硬膜を切除することができない場合には、できるだけ硬膜を電気凝固して焼きます。切除した硬膜は、人工硬膜などで補填します。

 

ただ、これまでにも述べたように、部位や大きさによって手術難易度が大幅に異なります。脳表面(円蓋部)の小さなものは脳神経外科の「初心者マーク」のついている医師でも可能ですが、錐体斜台部にある3㎝を超える大きな髄膜腫はエキスパートにしか手が出せません。脳動脈や脳神経といった重要構造物をどの程度巻き込んでいるかも手術のポイントになります。

 

どの部位の腫瘍にせよ、開頭手術を受けること自体が安易なことではないので、小さな腫瘍で、増大傾向がない限りは経過観察をお勧めします。経過観察中に明らかに増大してくるようなら、将来を考えて早めに手術を受けることも選択肢です。これは、年齢によっても異なってきます。3~40代の方では長い人生を考えると手術を考えなければならない一方、後期高齢者においては、症候性になって困っていない限りは手術を控えたほうが無難だと思われます。

 

手術の他の治療選択肢として、ガンマナイフがあります。ガンマナイフには、腫瘍増大を抑える効果が期待されていますが、聴神経腫瘍や転移性脳腫瘍ほどには効果が期待できないと思います。適応となるのは、小さな腫瘍で手術を希望しない場合、もしくは大きな腫瘍の摘出後の残存腫瘍などだと考えます。

 

手術の際に起こり得る合併症、後遺症は、髄膜腫のできる場所により大きく異なるので、すべてをここに書くことはできませんが、基本的には、巻き込まれている神経や血管の損傷、癒着している脳と脳表面の血管の損傷に伴うものです。血管が損傷されると出血、及びその支配する血流領域の脳梗塞が生じえます。それによりその脳の機能障害を来します。一方、脳神経が損傷されると、脳神経の障害(神経により、ものが二重に見える、片耳が聞こえない、顔面の麻痺、感覚障害、臭いの障害、視力障害、嚥下障害など)が出現します。回復は、損傷の程度によりますが、回復が期待できる期間としては半年~せいぜい1年程度と考えて下さい。

 

 

髄膜腫の予後

 

髄膜腫の予後は、摘出度と悪性度によって変わります。全摘出できて、硬膜や骨の処理もできた場合には10年以内の再発率は数%と言われます。一方、腫瘍の残存がある場合には程度により、20~40%程度の再発が生じえます。
髄膜腫の悪性のものは、再発を繰り返します。そして何度も手術を受けるうちに、徐々に摘出が困難な状態へと移行してしまいます。

 

 

 

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脳実質内腫瘍
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