脳の病気まるわかり

– パーキンソン病に対する手術 –

 

パーキンソン病に対する手術の対象

 

 

現在行われている外科治療の主な方法は、脳の特定の部位に微量の電流を流したり、もしくは破壊したりすることで、歪んだ神経回路のバランスを整える方法です。

 

L-ドーパ(ドーパミン)の内服によって運動症状は改善するが、薬の効果が長持ちしない(wearing-off)患者さんが対象になります。

 

薬が切れたときには運動障害が出現し、一方、薬を飲むと副作用が出現するような場合です。薬が効いている状態でホーエン・ヤール分類1~3期、薬が切れた状態では3~5期が適応です。但し、全身状態の不良な患者さん、重篤な認知障害のある患者さん、著明な脳萎縮のある患者さんなどは対象外になります。

 

手術では、脳内の決められた場所(ターゲット)を凝固して破壊したり、電気刺激したりします。主に対象となるターゲットには、視床、淡蒼球、視床下角があります。

 

視床:振戦が主な症状である場合に対象とします。通常、視床の中の腹中間核(Vim)というところをターゲットにします。合併症ないし副作用としては、呂律不良、運動機能障害、感覚障害、認知機能低下などが生じることがあります。副作用の出現率は破壊術の方で高いと報告されています。

 

淡蒼球(内節;Gpi):パーキンソン病の運動症状全般に対して用います。運動症状の日内変動の改善効果もあります。破壊の場合は効果が一定せず、また短期間(2年程度)で減少するようです。刺激の場合、効果がより長期に持続するようです。淡蒼球内節の刺激はそれ自体にジスキネジアを抑制する効果もあります。副作用・合併症としては、呂律の障害、飲み込みの障害、運動の障害、視野や視覚の障害などがあります。

 

視床下核:パーキンソンの運動症状全般に対して用います。刺激により、L-ドーパの減量が可能です。合併症・副作用としては、呂律の障害、飲み込みの障害、運動の障害、感覚の障害、精神症状が挙げられます。

 

ターゲットを破壊するか電気刺激するかについては、通常は電気刺激を用いることが多いです。但し、電気刺激するためには電気刺激装置を体内に埋め込まなければなりません。異物に感染することもありますし、そうでなくてもバッテリーを3-5年程度で随時交換する必要があります。

 

その他、手術のリスクとして脳内出血、けいれん発作、刺激電極リードに関わる断線などの機械的トラブル、刺激装置周辺の皮膚トラブルなどがあります。

 

 

手術の方法

 

 

手術当日の手術前に、座標の付いた四角いフレームを頭に固定した状態で、MRIを撮ります(もしくは、フレームを固定した状態でCTを撮り、前日までに撮ったMRIと重ね合わせること場合もあります)。

 

この、座標の付いたMRI画像を専用のコンピューターシステムで確認して、電極を挿入するターゲット(視床、淡蒼球、視床下核など)をMRI上で決定します。そして、そこに入る経路を決めます。その際に、脳表から刺す針が脳溝(脳のしわの間で、ここには血管が多数あります)や脳室、そして血管などを通らないようにします。脳室に入ると、挿入方向が曲がってしまい、狙ったところに入らなくなります。また、血管に入ると脳出血を起こしてしまいます。ターゲットとそこに至る経路が決まると、おのずと針が入っていく方向や角度が決まります。

 

挿入する経路を決めると、手術室での操作が始まります。手術は、局所麻酔で行います。患者さんは手術中に話をすることもできます。患者さんには手術用寝台の上で寝て頂き、頭は先ほどのフレームを用いて台に固定されます。フレームに取り付けた定位脳手術装置(目標の座標に向かって針を挿入する角度や方向を定めるための装置)で、先に決めた目標に向かって針が進むように設定します。

 

電極は、前頭部の髪の生え際のすぐ後ろから挿入します。この部位の皮膚に局所麻酔を注射し、頭蓋骨に1円玉程度の大きさの穴を開けて脳表を確認し、脳内に針を挿入します。先端には電極がついていて、針を少しずつ進めながら細胞の電位を記録します。目標に近づくと、神経細胞が活動で発火することによって生じる電位を記録することが出来ます。発生する電位が大きくなる様子を確認し、また患者さんの手の震えや腕の緊張がどう変化するかを確認しながら、目標の点まで針を挿入します。副作用がないかどうかも確認します。そこで、レントゲンを用いて電極が目標の位置に到達しているのかどうかを確認します。きちんと目標のところに挿入されているのを確認したら、針を抜いて、埋め込みに用いる電極に交換します。位置を微妙に調節して、最終的に埋め込みます。再度レントゲンで最終確認を行ったのちに、胸の鎖骨の下にバッテリー兼刺激の調節を行う装置を挿入して終了します(この操作だけは全身麻酔で行います)。

 

この方法では、1mm程度の誤差で目標の部位に電極を挿入することが可能です。

 

手術直後は、脳の局所の破壊による効果のため、症状の改善が得られますが、1週間程度で徐々にその効果が減っていきます。1週間程度してから、刺激装置の電源をonにして、刺激を開始します。

 

退院後は、1~3か月ごとに外来を受診して頂き、刺激の強さを調節していきます。また、従来型のバッテリーは刺激電流の使用量にもよりますが3~5年で消耗しますので、バッテリーがなくなったら局所麻酔でバッテリー交換(手術)を行わなければなりません。最近は、充電式のバッテリーも登場してきています。充電式のバッテリーであれば、メーカーにもよりますが週1回数時間の充電で10年近く持つようです。