脳の病気まるわかり

くも膜嚢胞

 

くも膜嚢胞(のう胞)とは

 

くも膜のう胞は、頭蓋内の一部において、脳の外に出来たのう胞です。その膜は、脳の表面を覆っているくも膜から出来ていて、内容物は無色透明の液体で、脳脊髄液と同じ成分です。生まれつきのものと考えられていますが、大きくなることがあります。

 

正常組織と同じ種類の細胞から成り立っていますので、腫瘍ではありません。くも膜のう胞は多かれ少なかれ脳を圧迫していますので、その圧迫の程度が高度で脳に対して悪影響を及ぼしていると考えられるときにのみ治療を考えます。

 

男性に多いことが知られていて、男女比は3-4:1程度のようです。

 

発生部位としては、シルビウス裂や中頭蓋窩(側頭葉の入る部分)が多く、次いで後頭蓋窩(小脳の入るスペース)です。その他、大脳円蓋部(表面)、鞍上部(脳下垂体の近く)、大脳半球間裂、四丘体槽などです。

 

 

中頭蓋窩の典型的な小さなくも膜のう胞のCT(上)とMRI T2強調画像(下)

 

 

症状は

 

くも膜のう胞には、ごく小さなものから、稀に巨大なものまであります。小さなものは無症状と考えられます。巨大なものや、増大傾向のものには注意が必要です。

 

くも膜のう胞は、しばしば何らかの理由で撮ったCTやMRIで偶然見つかることが多いものです。無症状の比較的小さなものについては特に治療の必要はありません。

 

症状として、特殊な場所のくも膜のう胞として、鞍上部のものは視神経圧迫による視力障害、下垂体機能低下、四丘体槽では眼球運動障害、大脳半球間裂の大きなものでは知的発達障害などが起こります。

 

その他、頭部打撲をきっかけにして、くも膜のう胞の外側に出血することがあります。くも膜のう胞の外側に出来た血腫を硬膜下血腫と呼びます。急性の場合には急性硬膜下血腫が、慢性の経過を辿った場合には慢性硬膜下血腫になります。大きくなると脳を圧迫して症状を出します。圧迫による症状は頭痛麻痺意識障害などになります。

 

くも膜のう胞の患者さんでは、てんかんの合併が多いという報告もみうけられます。ただ、その中には、てんかんとくも膜のう胞との因果関係が不明な患者さんも多数いらっしゃいます。事実、てんかんとくも膜のう胞との関係についてはよくわかっていません。

 

 


大きなくも膜のう胞の1例(MRI T2強調画像)

 

 

 

検査と診断

 

くも膜のう胞は、CTもしくはMRIで診断することが出来ます。のう胞の膜はくも膜と同じ非常に薄い膜であり、画像では殆ど映りません。のう胞の内容液は脳脊髄液と同じ無色透明の水のような液体なので、画像検査でも脳脊髄液と同じ色を示します。

 

CTでは、頭蓋内の一部に脳脊髄液と同じような黒い色をした部分があり、それに伴い脳の一部が変形しているのがわかります。

 

MRIでは、撮像方法により白く映ったり黒く映ったりします。T1強調画像では黒く、T2強調画像では白くなります。

 

くも膜のう胞の治療適応の診断に有用な検査として、脳槽造影というものがあります。これは、背中の腰骨のあたりから長い針を使って、脊髄の周囲を覆っている脳脊髄液の中に造影剤を入れる検査です。造影剤は、脳脊髄液の中を流れて脳の周囲に達します。当然、くも膜のう胞の周りにも到達しますが、くも膜のう胞が周囲と繋がっていなければ造影剤はくも膜のう胞の中には入っていきません。繋がっている場合には造影剤がくも膜のう胞の中に入っていきます。
造影剤がくも膜のう胞の中に入ったかどうかは放射線検査で調べます。具体的には、CTで行う方法(CT脳槽造影)とSPECTを用いる方法(RI脳槽造影)があります。
お困りの症状がくも膜のう胞と関連があるのかどうかの判断に困ったとき、脳槽造影の結果で造影剤がのう胞内にスムーズに入っていき、逆にのう胞からスムーズに出ていくようなら関係ないかもしれません。

 

 

 


トルコ鞍上部のくも膜のう胞の1例

 

 

 

治療は

 

無症候のものは基本的に経過観察のみで大丈夫です。ただ、比較的大きなものでさらに大きくなる傾向があったとき、もしくは圧迫による症状が出ている時には治療を検討します。治療としては、のう胞-腹腔シャント手術、内視鏡によるくも膜のう胞開窓術、開頭による被膜切除術になります。どれを行うのかについては一長一短で、発生部位にもよると思われます。

 

頭痛がある患者さんで、検査をしたところたまたま比較的大きなくも膜のう胞があり、手術をしたが頭痛は治らなかったというケースが時々あります。特に成人では、頭痛とくも膜のう胞との間に関係があるのかないのかについては、病歴や経過から慎重に検討しなければわかりません。頭痛を治して欲しいからという理由で、安易にくも膜のう胞の手術を受けるのはよろしくないと考えます。

 

鞍上部や四丘体槽など、くも膜のう胞が脳室に近接している場合、内視鏡による開窓手術でのう胞と脳室との交通を付けることが有効とされています。

 

硬膜下血腫を生じた場合、脳を圧迫していない場合には手術を行わずに経過観察していると血腫のみならずくも膜のう胞までもが消失することがあります。血腫により脳が圧迫されて症状を出している場合は別ですが、そうでなければ経過観察するのも一つの方法でしょう。

 

未就学の乳幼児の場合、無症状のものであっても変化しやすい時期ですので、学童期前までは経過観察するのが無難だと思われます。学童~成人にかけて見つかった場合、よほど大きなものを除いて定期的な経過観察は行わなくてもいいと思います。

 

 

予後は

 

多くの場合、無治療で良好な経過を辿ります。圧迫による症状を出している場合、手術により多くの患者さんで症状は改善します。ただ、長期圧迫による精神発達遅滞などは改善すると思わない方がいいでしょう。

 

手術には危険性もあります。術中や術後の出血や感染の問題はむしろ状態を悪化させる原因ともなりえるので、注意が必要です。その他、シャント手術を行った場合には、感染やシャント機能不全といったトラブルの恐れが半永久的に残ってしまいますので、慎重にすべきものです。

 

頭部打撲後にくも膜のう胞に関わる硬膜下出血が生じることがあります。特に、頭部打撲の可能性のあるようなスポーツの可否については難しいところで、主治医の先生の考え方次第ではそのようなスポーツを行わないように勧告を受けるかもしれません。

 

 

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