脳の病気まるわかり

もの忘れと認知症

 

普通のもの忘れとはどう違うの?

 

 

「昨日の夕食に何を食べたかな。」

 

「友人や、よく知っている有名人の名前がでてこない。」

 

人は誰しも年齡を重ねるにつれて、人の名前や過去の出来事などを忘れっぽくなったり、新しいことを覚えることが苦手になったりするのを感じるものです。しかし、「加齢によるもの忘れ(生理的なもの、老化現象の一部)」と「病的なもの忘れ(認知症)」とは、同じ現象の程度の違いを表しているものではありません。「もの忘れ」は老化現象という生理的な現象なのに対して、「認知症」は脳という臓器の病気であり、両者を区別しなければなりません。しかしながら、実際には両者の見極めは、時として非常に難しいものであります。

 

加齢に伴う生理的な物忘れの場合には、体験したことの内容を部分的に忘れてしまいますが、体験そのものは覚えています。例えば「今朝、朝食を食べた記憶はあるのだが、何を食べたか詳しく思い出せない」という経験はしばしばあると思います。この場合、うっかり忘れたという感じであり、忘れたという自覚を持っています。そしてすぐには思い出せないのですが、恐らくきっかけがあれば何を食べたのかを思い出すことができると思います。

 

これに対して、認知症によるもの忘れの場合には、行ったことや起こったことそのものを丸ごと忘れてしまています。記憶自体が脳に残っていないので、ヒントを与えても思い出すことすら出来ません。また忘れたことを自覚していないのも特徴の一つです。「朝食を食べたことそのもの」を忘れてしまい、「ごはんはまだ?」と何度も催促するようなこともあります。認知症の人はしばしば忘れたこともわからない状態になるので、周りの人との間にトラブルが起きてしまいます。

 

 

物忘れと認知症の違い

 

図1 もの忘れと認知症比較530

 

 

認知症の徴候

 

認知症は、患者さん自身では気付きにくいものです。そして、初期には加齢に伴う物忘れとの区別が難しいものです。生理的なもの忘れと思っていても、実はアルツハイマー病の初期症状であるかもしれません。もの忘れを放置していると認知症が進行して対応が遅れてしまうこともあります。

 

最近ちょっとおかしいな、と最も身近にいる方が気になり始めたら、認知症に詳しい医師を受診してみた方がいいと思います。ただ、繰り返しますが、初期の認知症の鑑別は容易なものではありません。認知症に詳しくない先生であれば、簡単な検査や問診のみで「異常ありません」で済まされるかもしれませんし、もしかしたら逆に簡単な診察のみで正確な診断もなされずにアルツハイマー病の薬を出されてしまうかもしれませんので、ご注意下さい。