脳の病気まるわかり

代謝異常、感染症による認知症

 

甲状腺機能低下症

 

甲状腺機能低下症には、甲状腺自体の機能が低下している“原発性”のものと、ホルモン分泌の指令中枢である脳下垂体に異常があり生じる“中枢性”のものがあります。原発性のものの代表格が橋本病(慢性甲状腺炎)です。また、中枢性のものとしては下垂体近傍の腫瘍や、その術後などがあります。

 

甲状腺機能低下症では、認知機能障害や抑うつ症状を来します。認知機能では、一般知能、注意・集中力、記憶、知覚機能、言語、実行機能などが広範に障害されます。

 

急性の症状では意識障害、せん妄、幻覚などの精神症状、認知機能障害、てんかん発作、不随意運動を、慢性の症状では抑うつ症状や不安、小脳性の失調を認めるとされます。

 

 

ビタミン欠乏症

 

ビタミンB1は、豚肉、豆、レバーなどに含まれ、糖質の代謝に関係します。白米のみを食べていると不足して、障害が出やすくなります。アルコール依存の人でも起こりやすいことが知られています。神経細胞は、糖分のみを栄養にしているので、ビタミンB1が不足すると、糖分の代謝に影響して神経がうまく機能できなくなります。

 

ビタミンB1の欠乏症には脚気とウェルニッケ・コルサコフ症候群の2種類があります。前者では末梢神経が障害され、後者では中枢神経が障害されます。

 

脚気の症状としては、全身倦怠感、動悸、手足のむくみ、しびれ、筋力低下などが知られています。ウェルニッケ脳症になると、目の動きの障害、歩行障害が生じ、長期化するともの忘れ、記憶力低下、見当識の障害、作話などが生じます。

 

治療はビタミンB1の補充が中心です。一日50~100mg、重症例ではそれ以上投与します。

 

 

肝性脳症

 

急性または慢性の肝機能不全(肝臓の機能が高度に障害され、役割を果たしえなくなった状態)によって生じます。アンモニアなどの中毒物質が肝臓で解毒されずに蓄積し、発症します。

 

言動の異常や意識障害を引き起こします。

 

初期では注意力や情報処理能力が低下し、昼夜逆転が生じます。異常行動やせん妄を認めます。高度になると意識障害が生じて昏睡状態になります。また、羽ばたき振戦と呼ばれる上肢の不随意運動が知られています。

 

診断には、血液検査(アンモニア高値、肝機能障害)、腹部画像検査(CTや超音波エコー)、脳波検査が有用です。

 

適切な薬物治療(ラクツロースやアミノ酸製剤など)で治療することで、改善が得られます。

 

 

神経梅毒

 

梅毒は、梅毒スピロヘータによる性感染症です。梅毒スピロヘータの感染が脳に及んだものが神経梅毒です。

 

神経梅毒は、髄膜血管型と実質型に大別さます。

 

脳実質に感染が及ぶと、認知症を呈する“進行麻痺”や、脊髄の障害による“脊髄癆”が生じます(実質型、50%)。

 

進行麻痺では、認知症を生じます。見当識や記銘力障害、判断力や計算力の低下に加え、反社会的な言動や異常行動、または幻覚や妄想、抑うつといった精神症状を呈します。

 

脊髄の後索・後根に感染が及ぶと、脊髄癆を生じます。四肢や体幹の電撃痛、進行性の歩行失調、感覚障害、排尿障害などの症状と、瞳孔異常が特徴です。

 

脳を覆う髄膜に感染すると、頭痛、発熱を伴う髄膜炎を生じます(髄膜型)。感染から数年以内に起こることが多いようです。また、水頭症を併発することがあります。脳血管内に感染すると、血管を閉そくして脳梗塞を生じます(脳血管型)。こちらは、感染から5年~数十年経って生じます。これらを合わせて髄膜血管型と呼びます。

 

臨床診断は血清のトレポネーマ抗原試験や梅毒特異抗原,および髄液検査(髄液中の梅毒高原試験、細胞数検査)を行い診断すします。進行麻痺における実質型神経梅毒の脳MRIなどの画像検査では、前頭葉や側頭葉を中心とする脳萎縮や白質が白くなる所見が見られるとされます。

 

治療はペニシリンGの点滴です。改善があまりみられず後遺症が残る例もあります。