脳の病気まるわかり

比較的頻度の少ない変性疾患

 

進行性核上性麻痺

 

脳のうち、大脳基底核、小脳、脳幹などの神経細胞が減少し、神経原生変化という異常が出現します。50~70歳代で多く発症します。通常、遺伝性はなく、原因はよくわかっていません。

 

歩行障害、動作が遅い、姿勢の異常といった症状が出ます。進行すると、目の動きが制限され(特に下側を見にくい)、認知症や嚥下障害、構音障害などを伴います。

パーキンソン病と同じような症状を呈しますが、パーキンソン病の薬では症状が改善しません。パーキンソン症状を示す患者さんのうち約5%を占め、男性に多い傾向があります。

歩行開始時には足が前に出ませんが、歩き始めると逆に止まらなくなり、バランスを崩して転倒したりします。進行すると首が後ろに反り返ったような姿勢になります。徐々に手足が固まってしまいます。食事を口から摂るのが困難になり、最終的には寝たきりになります。

認知症については、もの忘れのほか、思考が緩慢になり反応に時間がかかる、無関心などの症状が出てきます。また、無気力・無関心になりうつ状態となります。

 

MRIでは、中脳の萎縮や第三脳室の拡大といった所見が診断の参考になります。

 

有効な薬物治療は開発されていません。パーキンソン病の薬や抗うつ薬を使用することがありますが、効果は限られています。筋力維持やバランス訓練を目的としたリハビリテーションを行います。また、嚥下の訓練や発声の訓練も有用です。

 

症状に気づいてから寝たきりになるまでの期間は5-10年と言われています。

 

 

大脳皮質基底核変性症

 

前頭頭頂葉の大脳皮質が非対称性に強く萎縮します。また、基底核と黒質の変性を伴います。組織学的には神経細胞およびグリア細胞内に異常リン酸化タウが蓄積します。

 

パーキンソン症状と、大脳皮質の障害による症状があります。
パーキンソン症状としては、筋肉が硬くなり、動作が遅くなる、歩行障害などです。
大脳皮質の症状としては、手が思うように使えないなどです。時に、言葉の障害(失語)も伴います。
その他、アルツハイマー型認知症のような症状の方も報告されています。非典型的な症例が多く、症状は極めて多彩です。

 

特効薬はありませんが、パーキンソン症状に対してはパーキンソン病治療薬が多少有効なことがあります。アルツハイマー病の合併が考えられる時には、コリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬を試みることもあります。言語障害、行動障害、視空間障害などがあれば、リハビリテーションを行うことがあります。

 

発病から5~10年程度で寝たきりになります。

 

 

神経原線維変化型老年期認知症

 

神経原線維変化型老年期認知症は、海馬を中心に多数の神経原線維が認められる老年期認知症です。つまり、「神経原線維変化を伴う老年期認知症」ということです。新皮質にはこの変化を殆どみられません。

 

発症は加齢とともに増加します。高齢者認知症のうち5%以下と報告され、90歳以上で発症する方では更に増えます。脳の老化が加速した病態と考えられています。

 

特徴としては、80歳以上の後期高齢者に多く、記憶障害で発症し、緩徐進行性ということです。まれにせん妄、軽度の錐体外路症候(パーキンソン症状)が出現します。

 

MRIでは、海馬領域の萎縮、側脳室下角の拡大が特徴ですが、大脳皮質の萎縮は比較的軽度とされます。

 

高齢発症のアルツハイマー型認知症型認知症とは区別が難しいですが、神経原線維変化型認知症の方が進行がより緩徐です。アミロイドPETは鑑別に有用です。脳血流SPECTでは、頭頂葉や楔前部の血流低下が確認できます。

 

嗜銀顆粒性認知症も神経原線維変化型老年期認知症と同じく側頭葉の内側に病変があり、記憶障害で発症するといった共通点が多いですが、嗜銀顆粒性認知症の方が行動異常や性格変化が目立ちます。また、嗜銀顆粒性認知症の画像変化は左右非対称に出現します。

 

神経原線維変化型老年期認知症は多くの場合、アルツハイマー型認知症としてコリンエステラーゼ阻害薬が投与されていますが、効果はが証明されていません。

 

 

嗜銀顆粒性認知症

 

嗜銀顆粒性認知症は、脳内に嗜銀性顆粒状構造物がたまる特徴がある変性疾患です。アルツハイマー病と似たような部位(側頭葉の内側など)に病変が広がるのですが、アルツハイマー病とはやや異なります。

 

アルツハイマー病と似た側面もあるのですが、より高齢(80歳~)で発症し、進行は比較的緩徐です。主な症状は記憶障害ですが、初期には性格変化(頑固、怒りっぽい)を、次第に被害妄想、暴力行動、自発性低下などを伴います。万引きや性的な軽犯罪などがみられることもあります。アルツハイマーと比較して記銘力の障害は軽度です。

 

高齢者における嗜銀顆粒性認知症の頻度は約5〜9%とも言われ、決して稀な疾患ではありません。
なお、嗜銀顆粒自体はアルツハイマー病やレビー小体型認知症など他の変性疾患でも認めることが知られています。特に進行性核上性麻痺との合併は2割、大脳皮質基底核変性症では4割にも及ぶという報告もあります。

 

MRIでは側頭葉の内側の萎縮を認めます。脳血流SPECTでは側頭葉内側面の血流低下があり、左右差を伴います。

 

ステージ分類
迂回回ステージ(ステージ1):迂回回・扁桃体に限局。神経細胞脱落なし。症状なし。
側頭葉ステージ(ステージ2):側頭葉内側面を後方および前方に進展。神経細胞脱落あり。軽度認知障害(MCI)。
前頭葉ステージ(ステージ3):前頭基底部、前帯状回におよぶ。神経細胞の脱落が著明、大半の症例で認知症を伴う。

 

確立した治療法はありませんが、実際にはアルツハイマー型認知症に準じた治療が行われます。ただし、コリンエステラーゼ阻害薬の効果はアルツハイマー型認知症ほどは期待できません。

 

 

ハンチントン舞踏病

 

遺伝性の神経変性疾患です。
脳の大の基底核や前頭葉の神経細胞の変性・脱落が生じます。常染色体優性遺伝ですので、片親が病気を持っている場合、子供には50%の確率で遺伝します。世代を経るごとに発症年齢が若くなります。父親からの遺伝ではより顕著になるとされています。

 

主な症状は、精神症状、行動異常と、舞踏運動です。
初期には、怒りっぽくなったり、非常識な振る舞いが見られるといった症状が出たり、精神症状としてふさぎ込んだり不、。不安が強くなったり無関心になるなどのうつ症状や、怒りっぽくなったりするといった気分の変調が見られます。認知機能については、特に記憶、判断力や遂行機能の障害が見られます。
舞踏運動とは、自分の意志とは無関係に生じる顔面・四肢の素早い動きです。しかめ面、舌打ち、手指の背屈などに始まり、進行すると激しく踊りまわるように見えるので、このように呼びます。最初は、癖のようであり、家族は落ち着きが悪くなった、行儀が悪くなったと感じます。

 

CT、MRIでは、尾状核萎縮を伴う両側の側脳室拡大を認めます。

 

現在のところ、根本的な治療はありません。うつ症状・精神症状に対しては薬を用います。
経過は一概には言えませんが、介助が必要になるまでには10年以上を要します。