脳の病気まるわかり

認知とは何か 記憶とは何か

 

認知とは何か

 

 

【認知】
事象について知ること、ないし知識をもつこと。広義には知覚を含めるが、狭義には感性に頼らずに推理・思考などに基づいて事象の高次の性質を知る過程。
[岩波書店 広辞苑第五版]

 

これは、一般的な解釈です。医学や心理学でいう「認知」の解釈は以下のように説明されます。

 

Wikipediaには、「認知(にんち)とは、心理学などで、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のこと。」とあります。すなわち認知とは、ある対象を見たり聞いたり触ったりするなどして入力された感覚情報を、それが何であるか判断して理解をすることです。今入力された感覚情報を判断するためには、過去の経験に基づく記憶や知識が必要なのです。

 

人の顔を見て、自分の記憶と照合します。「この顔はいつもの〇〇さん」、「昔見た顔だな…〇〇さんだったかな」、「初めて見る顔だな」こうした記憶と照合して位置づけを決定することが認知になります。

 

固有の物体(人、モノ、概念)に対する捉え方(認知の仕方)というのは人それぞれ全く違います。親子でも、兄弟でも異なりますから、千差万別です。でも、認知機能が保たれている人間同士であれば、「この人の認知方法は自分とは異なるけど、異常ではない」と感じるものです。一方、認知機能が保たれていない人(認知症の人)のものの見方を通常の人から見た場合、「おかしい、この人は何を言っているのだろう」、と感じるものです。

 

認知の仕方は個々の人間の過去の経験によっても違いますが、人種や文化によっても異なります。例えば、北朝鮮の国家元首である金正恩氏に対する我々日本人の捉え方は、北朝鮮人の捉え方とは180°異なるものだと思います。イスラム教を崇拝する人間もいればイスラム教を敵視する人間もいます。これは、イスラム教という固有なものに対する距離感や位置づけの違いから生まれるものであり、認知の仕方の違いと言えます。

 

そして、人間以外の動物にも認知機能はあります。例えば、飼い犬の場合、飼い主を自分と関わりの深い対象として理解しているし、自分に対して好意的な人間だとか、敵意のある人間を見分けることも行います。これは、犬自身の経験やしつけによって身に付くようになるものです。犬の場合はにおいをかぐことが情報源の中心ですから、においという感覚情報を、過去の経験や知識との照合という作業を行うことで、脳で情報処理しています。

 

 

記憶とは何か

 

 

記憶とは、過去の経験を脳に保存しておいて、後で必要になったときに保存した内容を思いだす働きのことです。

 

記憶の過程には、3つの段階があります。

 

第一段階 「記銘」:物事を覚えることです。
第二段階 「保持」:記銘したことを脳に保存しておくことです。
第三段階 「想起(再生・再認)」:保持している内容を思い出すことです。

 

よく、「記憶力が悪くなった」という言い方をしますが、その言い方の多くは新しいことを覚えることが苦手になったということです(記銘力の障害)。また、いわゆる一般に言う「もの忘れ」は、頭の中に保持されている記憶を「想起」する過程がうまくいかない状態です。一方、認知症になると、これらの過程がすべて障害されてしまいます。