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– 特発性水頭症 –

 

特発性水頭症とは

 

 

 

 

 

 

特発性水頭症とは、明らかな原因がなく水頭症が生じるものです。基本的には、特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus (iNPH))と呼ばれるものになります。

 

 

原因は

 

iNPHは高齢者に多く、原因不明のものをこのように呼びます。

 

 

症状は

 

iNPHには3大症状(3主徴)があります。歩行障害、認知障害、尿失禁です。これらが、この順番・頻度で出現すると言われます。時々、数ヶ月から数年前発症の認知症として薬による治療を開始されることがあり、アルツハイマー病や血管性認知症との鑑別が重要です。

 

 

検査と診断

 

水頭症は、認知症の方に頭部CTで脳室拡大があることがきっかけとなって発見されます。難しいのは、脳室拡大があれば誰でも水頭症というわけではないという点です。脳室拡大は、脳脊髄液の循環吸収障害のみならず、脳の萎縮によっても生じるからです。逆に言うと、進行期の認知症の患者さんであれば殆どの場合で脳室は拡大しているのです。ですので、重要なのは次に上げる諸検査の結果です。

 

MRIでは、脳室拡大の他に、「シルビウス裂の開大(左図の赤丸で囲んだところ)」と「高位円蓋部の脳溝の狭小化(右図の赤い線が示す白いところ)」という画像所見が重要です。

 

他の画像診断として、脳血流SPECTや脳槽造影などが参考所見になることがありますが、診断に必須ではありません。

 

髄液排除試験は重要な検査です。これは、腰椎(背中の腰のあたりの真ん中)の椎間から脊髄を包む硬膜内に針を刺すことで、脳脊髄液を排出させる試験です。少量の髄液が検査のために必要なときにも腰椎穿刺は行われますが、正常圧水頭症の診断時には30~50mlという比較的多量の脳脊髄液を排除します。正常圧水頭症の患者さんでは、脳脊髄圧が正常でないといけません。また、脳脊髄液を大量に排除すると、水頭症が一時的に改善して、症状が良くなるはずです。良くならなければ、診断が異なる可能性がありますし、水頭症に対する外科治療を行っても効果が得られないかもしれません。

 

 

治療は

 

iNPHに対する治療は、主にシャント手術です。シャント手術に関しては、先日の水頭症の項目でも述べましたが、iNPHに対しては主に脳室-腹腔シャントもしくは腰椎-腹腔シャントが用いられます。
両者は、脳脊髄液を流す大本のところが脳室なのか、脊髄腔なのかという違いはありますが、効果に大きな違いはないと思っていいです。

前者の方がより確実ではありますが、脳実質にカテーテル(チューブ)を刺入しますので、脳が傷つくことになります。細かいことを言うと、このことにより脳出血や脳梗塞を来したりてんかんを起こすようになったりする可能性を完全には否定できませんが、通常は問題ありません。しかし、脳に刺すということに対して懸念を持たれる方には腰椎-腹腔シャントの方が合っているかもしれません。

 

腰椎-腹腔シャントの欠点は、腰椎に問題があり挿入が困難な方がいるということ、狭いスペースなので長期的な効果や安定性に若干ながら不安があるということだと思われます。ですが、腰とお腹は起きている時に同じくらいの高さなので生理的には好ましいものだと思います。

 

実際には、どちらを選択するかは主治医の経験、好み、裁量によるところが大きいと思います。どちらも行う医師もいれば、どちらかに偏った医師もいると思います。

 

シャント手術がうまくいくと、歩行障害や認知症といった症状が改善するはずです。手術で治る認知症と呼ばれる由縁はここにあります。

 

 

 

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