脳の病気まるわかり

–てんかんの画像検査–

 

てんかんの画像検査

 

 

てんかんは、大きく症候性てんかんと特発性てんかんに分けられますが、これらを分ける大きな違いとして、脳の局所に何らかの形態異常があるのか、もしくはそうでないのか、というポイントがあります。形態異常があり、それが原因となっていることが証明できれば、それは症候性てんかんと言える決定的な証拠になります。一方、特発性てんかんの場合には基本的に画像検査では脳の形態的な異常を認めず、発症年齢や発作時の症状、脳波所見から推定されるものです。MRIはてんかん症候群を決定する上で重要な役割を担います。

 

 

MRI

 

 

てんかん焦点を見つけるための最も手っ取り早い方法は形態的な異常部位を見つけることで、そのために最も有用な検査はMRIになります。MRIやCTでは、脳の中に形態的な異常がないかどうかを確認するための検査になります。MRIでは形態的な異常として、脳卒中の跡や脳腫瘍、形成異常などを発見することが出来ます。但し、あらゆる異常が見つかるわけではありません。

 

例えば、てんかんの焦点となり得る病変として限局性皮質形成異常(focal cortical dysplasia; FCD)と呼ばれるものがあります。FCDにはいくつかのタイプがありますが、そのうちI型と呼ばれるタイプはMRIでも見つけにくいものです。ですので、MRIでも全く病変が見つからないこともあり、こうした場合はMRI陰性てんかんとして手術が難しいものに分類されます。

 

てんかん焦点を見つけるためのもう一つの重要な検査は脳波検査です。てんかんが疑われる場合には脳波検査は欠かせませんが、てんかん手術を検討する場合には、長時間ビデオ脳波というものを行います。これは、脳波電極をつけたまま1泊2日から数日間病室で生活するものです。同時に、発作の状態を捉えるためにビデオで監視します。発作を捉える必要がありますので、発作が月に数回も起こらないひとでは内服薬の種類や量を減らしたり飲むのを一時的に中止したりする必要があります。

 

問題点として、脳の形態異常は必ずしもMRIで見つけられないこともあるという点です。つまり、MRIで何も異常がないからと言って、「局在関連てんかんではない」とは断定できません。MRIでは明らかな異常がないにも拘わらず、局在関連てんかんが強く疑われる場合、下記の諸検査を行うことがあります。

 

 

その他の画像検査について

 

 

他の重要な検査として、PET、SPECT、脳磁図が挙げられます。薬でもてんかんが治まらない場合、手術を検討することも必要になりますが、これから述べる検査は主に手術を検討するという前提で行われるものです。

 

基本的には、手術を行うことが出来るのは症候性てんかんです。なぜなら、症候性てんかんにおいてはてんかんの原因となっている異常部位を取り除くことにより発作消失が見込めるからです。

 

なお、症候性てんかんの対義語の特発性てんかんの多くは薬に反応しやすく、手術を検討したくなるほど困る状態になることは滅多にありません。また手術で取り除きたい部位を探しても見当たらないので、切除すべき脳も見つかりません。

 

症候性てんかんに対する外科治療は、てんかん焦点(てんかんの起こり始める場所;てんかん原性焦点)の切除です。てんかん焦点を切除するためにはまず、てんかん焦点を見つける必要があります。そして、切除したら何らかの脳機能を損ねないかを調べることも重要です。

 

 

PET(positron emission tomography)

 

 

PET(positron emission tomography)は、しばしば悪性腫瘍の検索を目的として行われる検査で、一般的にはfluorodeoxy glucose(FDG)というものを体内に注射して、その体内分布を調べます(FDG-PET)。これは、悪性腫瘍がエネルギー源としてのglucose(グルコースつまりブドウ糖、糖分)を沢山消費する性質を利用したものです。実は、脳もブドウ糖を沢山消費していて、しかも脳は糖分以外の栄養素であるタンパク質や脂質を利用することが全く出来ません。ですので、FDGを用いたPET検査は、脳の栄養利用状態の評価に適しているのです。
難治性てんかんのてんかん焦点では、発作がないときの栄養状態が悪いことが多いため、難治性てんかん患者さんにFDG-PET検査をすると、焦点にはFDGが集まりません。この検査は、80~90%の診断率があるとされていますが、てんかんの場合には、難治性てんかんに対する術前検査としてしか保険適応が認められていません。

 

 

SPECT

 

 

SPECTも、てんかんの術前検査として認められている検査です。
SPECTには、脳血流を調べるためのIMPやECDといった核種を用いた検査(脳血流SPECT)と、脳細胞受容体の脳内分布を調べるiomazenil(イオマゼニル)という検査(iomazenil-SPECT)があります。
てんかん焦点では、発作時以外の脳血流も低下しています。ですので、脳血流SPECTを行うと脳血流低下を反映して核種の集まりが悪いのです。ただ、こちらは糖代謝ほど明瞭ではなくまたSPECTという検査の精度の低さから、正診率は60%程度とされます。ただ、最近は発作時に脳血流を調べる検査が行われることがあります(発作時SPECT、ictal SPECT)。発作時にはてんかん焦点でエネルギーを大量に消費するため、脳血流も増えるのです。ただし、発作時を狙って検査を行うのは容易ではありませんので、行える施設も限られますし、対象とする患者さんも発作の多い方に限られます。
Iomazenil-SPECTで調べるのは、脳内の抑制系伝達物質であるGABAの受容体であるベンゾジアゼピン受容体というものです。Iomazenilは体内に入るとベンゾジアゼピン受容体に結合する性質を持ちます。てんかん焦点では、脳の興奮を抑制する機構が弱くなっている性質を利用して、iomazenilの集積が悪くなります。

 

 

脳磁図

 

 

脳磁図(Magnetoencephalography; MEG)は脳波と同じような意味合いのある検査です。
脳磁図は、脳の電気的な活動によって生じる磁場を超伝導量子干渉計 (SQUIDs) と呼ばれる非常に感度の高いデバイスを用いて計測するイメージング技術です。
脳磁図で見ているのは、脳が発生する磁場、つまり磁力です。脳が磁力を発生しているなんて聞かれたことがない方が殆どだと思います。
中学校で習った電流の右ねじの法則を思い出して下さい。電流の流れているところには磁界が発生しているのです。脳の活動は小さな電流によって維持されているということは、すなわち脳には磁界が発生しているということを意味するのです。それは、とても小さな磁界ですので、磁石が引き寄せられるようなものでは到底ありません。脳磁図を測定する機械は、この僅かな磁界を増幅して波形として記録するのです。
脳磁図には脳波を上回るメリットがいくつかあります。まず、磁界は頭蓋骨の影響を全く受けないということです。それから、脳波では通常電極の数が制限されますが、脳磁図では200~300チャネル以上測定することが容易にできます。

 

脳磁図検査では通常、得られたデータから電流源推定というのを行います。つまり、頭皮上で得られた凡そ300チャネルから成る波形が仮に脳の一箇所から発生したものであればその一箇所は何処かということで、これを推定することを逆問題を解くと言います。このための方法として最も標準的なのがequivalent single dipole(ECD)法と呼ばれるものです。ただ、この方法で推定された焦点にも問題があり、簡単には行かないので、その他の方法の研究も一部の施設で盛んに行われています。