脳の病気まるわかり

– トランジション(キャリーオーバー)の問題 –

 

トランジション(キャリーオーバー)とは

 

てんかん患者さんのなかには、乳幼児~小児期発症の方が多数いらっしゃいます。小児期発症のてんかん患者さんにおいて、てんかん発症の原因や経過は成人期や高齢発症の方とはかなり異なります。

 

小児期発症の患者さんは小児神経科で診断・治療を受けていることと存じます。長期的な経過の中で発作が消失し、薬を中止できる方も少なくないのですが、一方で発作が減少せず、薬を続けざるをえない患者さんも沢山いらっしゃいます。

 

小児科の治療対象とされる年齢は15歳までなのですが、患者さん及びご家族にとっては小児神経科から離れることに対する不安感は、一般的に強いものです。また安心して受け入れられる成人科も少ないことから、結局は小児神経科で抱え込んでしまうということは少なくありません。これを、トランジション(キャリーオーバー)と呼びます。

 

以前は、わが国ではキャリーオーバーと呼ばれていましたが、最近は世界的な表現に合わせてトランジションと呼ばれています。

 

トランジションを困難にしている理由

 

小児科から離れられない理由は複数あると思われます。

 

てんかん発作が難治の経過を辿っている人は、知的障害を抱えていることも少なくないので、ひとりで受診できないことが少なくありません。そして、このような患者さんは成人科へ移行するにあたり、自立と社会参加が望めない辛い状況にあります。

また、神経以外の小児特有の合併症(心臓、消化器系の奇形など)があり、複数科を受診している患者も多く、成人科のてんかん専門医単独では診療することが難しい方も少なくありません。

更に、てんかん診療を安心して任せられる成人を対象とした「てんかん専門医」の数が極めて少ないのも問題です。

そして何よりも、これまでの経過を一番理解している主治医の元が一番安心するものです。

 

移行期は人生の中で非常に重要な時期です。発作が落ち着いていても断薬に関しては様々な難しい問題を抱えています。学校生活や大学受験を迎えますし、運転免許の問題、更には結婚・妊娠・出産といった諸問題もあります。

 

安心して任せられるてんかあん専門医を中心としたてんかんネットワークの充実が求められています。また、移行にあたって問題を抱えている患者さんの場合には小児科と成人科の併用も検討すべき一つの方法かもしれません。