脳の病気まるわかり

抗てんかん薬について – 副作用と注意点 –

 

抗てんかん薬の定期内服の重要性

 

抗てんかん薬は、体の中に一定の濃度が常にた持たれることで初めて効果を発揮します。

 

飲み過ぎると体の中に過剰にたまって副作用を起こします。抗てんかん薬は主に脳を始めとする中枢神経系に効果を発揮しますので、脳み過ぎると脳の働きを過剰に抑制します。

 

一方、体の中の薬の量が足りなくなると、てんかん焦点となっている部分の脳の活動を抑えきれなくて発作を起こしてしまいます。

 

別の薬で、痛み止めなどは、飲んだら30分程度で効果が表れて、数時間以上するとだんだんと効果が和らいで徐々に痛みを感じるようになってきますが、そうなればまたすぐに痛み止めを飲めばいいのです。

 

しかし抗てんかん薬の場合はそうはいきません。効果が和らいできたということは、発作が起こりやすくなったということです。てんかんを持っている患者さんでは、発作を起こさないようにするために常に薬の体内濃度を有効範囲内に保つ必要があるのです。ですので、定期内服は極めて重要です。

 

更に、抗てんかん薬は、飲み始めたばかりの頃は代謝の関係で体の中の濃度が不安定ですが、一定の量を一定の間隔で暫く飲み続けていると一定の濃度に安定するようになります。これを、定常状態と呼びます。抗てんかん薬による発作抑制には、定常状態における血中濃度が、薬が効果を発揮しやすい濃度(有効血中濃度)に保つことが重用です。

 

定常状態に達するのに要する期間は抗てんかん薬により異なります。

 

 

血中濃度測定の意義

 

薬には、有効濃度というものがあります。有効濃度は、その範囲において多くの患者では発作抑制効果を発現しやすくまた濃度依存性副作用も出現しにくい範囲のことです。

 

有効濃度域以下でも効果を示す患者さんもいますし、治療有効濃度を越えてはじめて効果が出現する患者さんもいます。有効濃度には個人差があります。

 

抗てんかん薬の血中濃度を測定するのは,
① 副作用がみられたとき
② 発作抑制効果がないとき
③ 服薬状況確認が必要なとき
④ 他の薬剤との相互作用の可能性があるとき
⑤ 妊娠予定,妊娠中,肝障害,腎障害合併時
などです。

 

有効濃度に達していない場合でも発作コントロールが得られていれば増量を考慮する必要はありません。

 

 

薬物相互作用

 

薬物相互作用とは,体内に存在する薬剤の代謝や効果発現に別の薬剤が影響を与えることを言います。

 

薬物動態学的相互作用と薬力学的相互作用に分類されます。

 

薬物動態学的相互作用とは、薬を消化管で吸収し、体内で蛋白と結合し、肝臓などで代謝され、便や尿に排泄される各過程において生じうる薬の相互作用です。代表例としては、腸管からの吸収過程で一部の胃薬などにより阻害されたり、血中における蛋白結合で他の薬と競合したり、肝臓におけるチトクロームP450酵素群(CYP)による代謝に際して他の薬と競合するなどといった影響があります。

 

薬力学的相互作用とは、脳で薬が細胞に対して効果を発揮する際に、同じ作用点に対して同機序もしくは逆の作用の薬が影響を及ぼすことで、作用が過剰になったり弱まったりすることです。抗てんかん薬では、多剤併用を避けた方が無難とされますが、その理由の一つはこの薬物相互作用を避けるためです。

 

 

抗てんかん薬の副作用

 

抗てんかん薬には、高い抗てんかん効果が期待できますが、一方で副作用の頻度も高いもので、また一部には重篤な副作用を起こすこともあります。

 

抗てんかん薬の副作用は、①個体特異性と関連したアレルギー機序の関与するもの、②用量依存性のもの、③長期服用に伴う慢性的なものに大別されます。

 

 

① 特異体質による副作用

 

アレルギー性の機序が関与して一部の患者にのみ起こる副作用です。薬疹、赤血球・白血球・血小板の減少、肝機能障害の一部などです。

 

皮膚病変については、カルバマゼピン(テグレトールなど)、フェニトイン(アレビアチンなど)、フェノバルビタール(フェノバールなど)といった従来の抗てんかん薬で注意が必要です。また、ラモトリギン(ラミクタール)では時に重篤な皮膚障害を生じることが知られています。

 

重症型の皮膚病変として、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN、ライエル症候群)、そして薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)があります。DHISは皮膚病変の他に、発熱、リンパ節腫脹、多臓器症状を特徴とし、ヒトヘルペスウイルス6型の再活性化を伴います。

 

薬疹は投与2か月以内の初期に生じることが殆どで、少量から緩やかに増量することで発生頻度を減らせる可能性があります。

薬疹の特徴は、体の一部ではなく、胸や背中などの体幹を始めとする全身に左右対称に出現することです。

抗てんかん薬の内服中、特に飲み始めてから8週間以内の初期に薬疹を疑う症状が出たら、主治医の判断次第ではありますが、抗てんかん薬の内服をすぐに中止し、皮膚科を受診することをお勧めします。

 

汎血球減少や肝機能障害などに対しては、定期的な血液検査が必要です。検査値の異常が見られたら発作コントロールとの兼ね合いにより減量や中止、他剤への変更を検討します。

 

 

② 用量依存性の副作用

 

抗てんかん薬は中枢神経に作用し、神経活動の過剰な興奮を抑制しますが、抑制が部分的に過度になると中枢神経系を過度に抑制し、副作用を生じることがあります。また、薬が効くのは中枢神経に留まりませんので、他の臓器に影響を与えることもあります(心伝導系の障害や肝機能障害など)。

 

中枢性の用量依存性副作用として眠気、めまい、複視、ふらつき、眼振、振戦、行動異常などが挙げられます。血中濃度が治療域上限を超えると出現頻度が増えるため、薬によっては血中濃度を確認する必要があります。服薬後に一過性に出現しやすく、減量か服用回数を増やすことで改善が期待できます。

 

 

③ 長期服用に伴う慢性的なもの

 

パルプロ酸(デパケン、セレニカ)による食欲増進、体重増加、フェニトイン(アレビアチン)による歯肉増殖といった副作用が含まれます。薬を開始してから数年たつと、症状が薬と結びつかなくなるため、慢性のものは見逃されがちになりやすいものです。

 

 

なお、抗てんかん薬の副作用として、胎児の催奇形性の問題がありますが、これについてはてんかんと妊娠のページを御覧下さい。