脳の病気まるわかり

– 髄膜炎・脳膿瘍による頭痛 –

 

中枢神経感染症による頭痛

 

 

病原性微生物が中枢神経系へ侵入した状態です。

 

病原性微生物の侵入形態により髄膜炎と脳膿瘍に分類されます。髄膜炎とは、脳脊髄液の中に微生物が侵入した状態を指します。一方、脳膿瘍とは脳の局所に細菌が巣を作った状態を指します。

 

ともに器質性頭痛の原因となります。

 

 

髄膜炎による頭痛

 

髄膜炎は、入り込む微生物によってウイルス性髄膜炎、細菌性髄膜炎、真菌性髄膜炎などに分類されます。

 

髄膜炎の患者は38~39℃以上の高熱とともに激しい頭痛を訴えます。しばしば強い吐き気を伴い、嘔吐を繰り返します。こうした症状が出る前には風邪様症状をしばしば認めます。

 

診断には上記のような病歴が大事です。また、首が固くなり、前に曲がらなくなります。通常の人は顎を胸につけることが出来ますが、髄膜炎の患者さんでは顎が胸につかなくなります(項部硬直)。また、首を左右に振ると痛みが響きます。

 

髄膜炎の確定診断には、脳脊髄液の検査が重要です。CTやMRIといった検査では、明らかな異常は指摘できないことの方が多いですが、脳脊髄液の検査を行う前には一度受ける必要があります。

 

脳脊髄液は、腰椎穿刺という検査によって採取します。これは、腰骨の間から細長い針を刺し、脊髄の周囲にある脳脊髄液を抜き取る方法です。脳脊髄液を調べると、髄膜炎の患者さんでは液の中に白血球が多数含まれ、また髄液中の糖分は減少し、タンパク質が増加します。こうした髄液の所見は、侵入した微生物によって異なる傾向を示しますので、髄液所見から侵入した微生物の種類を推定することができます。

 

決定的な検査は、採取した脳脊髄液の細菌培養検査やウイルス抗体検査です。ただ、こうした検査で微生物を特定できないこともしばしばありますし、抗菌薬や抗ウイルス薬を使用したあとではその可能性は高まります。

 

点滴や内服による適切な治療を行うことで、多くの場合に髄膜炎は緩解しますが、多少時間を要します。高熱は数日以上続きますし、頭痛は更に長く残ります。その間にてんかんを起こしたり水頭症になったりして緩解後にも治療が必要になることもあります。最悪の場合には遷延性意識障害になったり、(以前と比較すると少なくはなりましたが)死亡する可能性もあります。

 

 

脳膿瘍による頭痛

 

脳膿瘍は、脳内の局所に病原性微生物が侵入して巣を作った状態です。髄膜炎と同様に発熱や頭痛を訴えます。治療を行わないと髄膜炎よりもたちが悪く、治療を開始するまで病状は進行すると考えられます。つまり、徐々にけいれんを起こしたり意識が悪くなったりして、言動もまともではなくなります。なお、発熱や頭痛よりも意識障害や行動異常、半身まひなどの方が目立つこともあります。

 

脳膿瘍の診断には、CTやMRIが極めて有用です。膿瘍は画像で局所性の病変として描出され、特に造影剤を使用しながら検査を行うとリング状増強病変として認められます。リング状増強病変の鑑別として、脳の悪性腫瘍が挙げられますが、別に、MRIの拡散強調画像という画像を撮像すると、膿瘍が白く写ってきますので、これでほぼ確定診断になります。

 

腰椎穿刺による髄液検査は、状況次第ですが、脳ヘルニアを悪化させる可能性があり、むしろ禁忌となりえますので注意が必要です。

 

脳膿瘍に対する初期治療は抗菌剤(抗生物質)の大量投与になります。通常量では脳に十分な抗菌剤が到達しません。ただし、適切な種類の抗菌剤を使わないと改善は見込めません。

 

抗菌剤を1週間以上使用しても反応が悪い場合、もしくは初期から脳膿瘍が極めて大きく患者の意識が悪い場合には膿瘍のドレナージ(排液)を行います。つまり、開頭、もしくは穿頭(小さな穴をあけること)により、膿瘍の内部にカテーテル(チューブ)を挿入して内容液を外に出すことです。場合によっては膿瘍ごと取り除いてしまいます。この際、可能であれば内容液を採取して細菌培養検査に提出します。

 

脳膿瘍の予後は、決して良いものではありません。うまくすれば緩解状態に持っていけますが、後遺症を残す場合も少なくありません。てんかん発作が残ったり、高次脳機能(高度な思考能力)の障害を残すことはしばしばありますし、最悪の場合にはやはり寝たきりや死亡の原因となります。

 

気になる症状があれば、すぐにお近くの脳神経外科を受診することをお勧めします。

 

 

 

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