脳の病気まるわかり

頭を打った(頭部打撲)

 

頭部打撲の後に起こりえること

 

頭部打撲後に意識が悪くなったり、手術を受けたり、また死亡事故につながることもあるのはご存知のことと思います。

 

では、頭部打撲後にはどうしてこのような恐ろしい事態に繋がるのでしょうか。

 

それは、殊に以下の2点に集約されます。

 

  • – 頭蓋内に出血する。
  • – 頚椎・頚髄を損傷する。

 

頭部打撲後に、頭蓋骨を骨折することがあります(参照:頭蓋骨骨折)。頭蓋骨を骨折した場合、骨の裏側を走行している動脈や静脈が傷ついて出血することがあります(硬膜外血腫)。

 

このような頭蓋内出血は、頭部打撲後に最も注意しなければならないことと言えます。ほかにも頭蓋内の出血した部位により、上述の硬膜外血腫のほか、硬膜下血腫(外傷性)くも膜下出血脳内血腫、脳室内血腫などがあります。出血すれば、その程度によっては急速に意識状態が悪化して脳ヘルニアを起こす危険性があり、状況次第では緊急手術が必要になります。

 

また、首が痛い時にも注意が必要です。頚椎損傷を伴っている可能性があります。頚椎損傷とは、頭部打撲の際の強い衝撃により首の骨がダメージを受けて生じます。それに伴い、頚椎の内部を走行する神経組織(脊髄)が損傷した状態です。四肢麻痺、呼吸困難になる危険性もあります。頚椎損傷があるのに首を動かすと、頚髄のダメージが悪化して症状がひどくなることがあります。強い首の痛みに加え、手足のしびれや動きづらさがあるときには、むやみに首を動かさず、救急車を呼ぶのがよいでしょう。

 

 

危険な打ち方とは

 

一般的には、頭部打撲の際に頭が受けた衝撃の程度を状況から推測して判断します。

 

– 車やバイクとの接触事故
– 高い位置からの転落

  • – 受け身を取れていない状況での転倒
  • – 重たい落下物などによる打撲
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    また、年齢や背景に応じて考える必要もあります。

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    – 高齢者:受け身を取りにくい。

  • – 乳幼児:受け身を取りにくい、症状の把握が難しい。
  • – 血液疾患・抗血栓治療中:出血しやすい、血が止まりにくい。
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    その他、お酒を飲んでいる人には特に注意が必要です。酔っ払って寝ているだけなのか、頭蓋内に異常があって意識が悪くなったのかの区別がつかないためです。

 

 

病院に連れていくべきか

 

頭を打った場合、直後であればまず、意識があるかを確認することです。「大丈夫か」と声をかけ、返事があり、打撲前後の記憶があれば意識はあるということでしょう。

 

 

意識がはっきりしない場合

 

意識がはっきりしない場合には即座に病院への搬送を検討してください。

また、返事はあっても打撲前後の記憶がない場合や、今日の日付や今の場所がわからない、今日の予定がわからないなどの状態があれば、脳震盪ということになります。この場合にも、慌てなくてもいいので専門医の診察を仰いだ方が無難です。

 

 

意識が保たれている場合

 

意識が保たれていたら、ふらふらしていないか、指示に応じることが出来るか、しっかりと座り、立つことが出来るかを確認します。

 

最初の状態で意識が保たれていて、その他の明らかな異常がない場合、基本的には経過観察することが最も重要になります。誰かがそばについて打撲後の24時間はこまめに様子を見てください。夜は就寝すると思いますが、夜中もときどき声をかけて意識があるかを確認したほうが無難です。

 

経過観察中、いつもと違う様子があれば病院受診を検討しましょう。ふらふらしている、まっすぐ歩けない、つじつまの合わないことを言う、けいれん、ぼーっとしている、視線が合わない、などです。おう吐しても1回限りでその後すっきりしているのであれば大丈夫かもしれませんが、吐いた後にも状態がおかしい場合、繰り返し吐く場合にも受診を検討しましょう。

 

なお、頭を打った後に意識消失がなく、いつもと変わりない場合、病院を受診するかどうかについては、打撲の状況や受傷者の年齢や健康状態にもよります。柱や角で打撲したような場合には、直後から脳に大きな異常が生じている可能性は高くありません。一方、滑って後ろ向へ転倒し、後頭部を強打した場合は不安要素もありますし、転落した場合や、工事現場などで重たいものが上から落ちてきて直撃した場合などにはかなり危惧されます。

 

受傷者の要素としては、小さな子ども、高齢者では防御態勢が不十分な可能性もあり、思いのほか強打したかもしれませんので、注意した方がいいです。また、基礎疾患に出血傾向のある患者さん抗凝固薬(ワーファリンなど)を飲んでいる患者さんについては、打撲の程度にもよりますがより積極的に病院に行くことを検討すべきかもしれません。

 

ただ、これらは飽くまでも一般的な目安ですので、必ずそれぞれの状況に応じた判断を行うことが重要です。

 

 

乳幼児の場合

 

小さな乳幼児の場合、コミュニケーションが取れないため、状態の把握は困難です。でも、こどものことは、普段から見慣れている親御さんが一番わかるはずです。何となくいつもと違うと感じれば、病院で相談しましょう。

なお、打撲直後から直ちに泣いた場合は意識があった証拠なので、むしろ安心ですが、反応があるまで、もしくは泣くまでに多少の間があった場合には意識消失があった可能性があります。また、「視線が合わない」、「活気がない」などの状態は、頭の中に何かが起きている可能性がありますので注意が必要です。その他、けいれんやひきつけを起こすこともあります。

 

 

 

頭部打撲後に様子を見る場合は

 

前述のように、頭部打撲後に起こりえる大きな異常は、頭蓋内に出血することです。出血は打撲直後に始まるので、出血量が著しければ打撲から間もなく状態が悪化(麻痺意識障害が出現)し、出血量が少なければ症状は数時間以上経って出現、もしくは症状がでないかもしれません。出血が止まらない状態を放置し続ければ症状が進行していずれ脳が圧迫されて死んでしまいますが、出血の勢いが弱ければいずれ止まるものです。ですので、打撲後から6時間以内は特に重要な時間であり、24時間を過ぎて症状がなければ出血はしていない、もしくは大きな出血には至らずに止まったと考えて差し支えないと思われます。

 

その他、頭を打って数日以上経過してから麻痺やふらつき、意識障害などの症状が出てくることがあるかもしれません。新たに出てきたのが頭痛のみであれば、それは頚部の捻挫によるものが一番多いですが、時として慢性硬膜下血腫を始めとする何らかの異常を頭蓋内にきたしている可能性もあります。病院に行って検査を受けましょう。

 

 

傷の処置

 

 

頭部打撲後には、傷に対する処置も考えなければなりません。皮下出血のみであれば、それがよほど大きくならないかぎり、病院ですることはあまりありません。擦過傷は傷をよく洗って清潔を保つことになりますが、必ずしも病院を受診する必要はありません。出血を伴う皮膚の挫創や裂創があれば、病院で縫合などの適切な処置を受けるべきです。頭皮は非常に出血しやすいものですので、慌てずに病院に行きましょう。その間は、ガーゼやティッシュなどでしっかりと圧迫しておきます。なお、大して出血していなくても、傷が割れて開いているときには縫合したほうが治りが良いので、速やかに病院を受診しましょう。