脳の病気まるわかり

血圧が高い(高血圧)

 

高血圧とは

 

ご存じの通り、血圧が高い状態を「高血圧」と呼びます。私たちの血圧は常に一定ではなく、安静時と運動時でも異なりますし、気候やストレスでも変わります。高血圧とは、安静状態での血圧が慢性的に高値になる状態を指すものであり、一時的に血圧が高くなる人は真の「高血圧」には該当しません。

 

高血圧になると常に血管の壁に強い負荷がかかるようになるため血管が傷つきやすくなり、柔軟性がなくなって硬くなり、「動脈硬化」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。血圧が多少高くても特に自覚症状がないため放置されがちです。気付かないうちに動脈硬化が進行し、放置しているとある日突然命にかかわる重篤な病態になってしまうため、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれています。その他、脂質代謝異常症、糖尿病も、サイレントキラーの一種です。

 

患者さんに現在治療中の病気について伺うことがありますが、「高血圧」を申告しない方は結構多いものです。高血圧は治療を必要とするとても重要な病気です。

 

 

成人における血圧値の分類(mmHg)

(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」より)

 

一般に血圧は、高齢になるほど高くなる傾向があります。しかし比較的若い世代でも、30歳代の1~2割、40歳代2~3割以上は高血圧の状態です。若い世代では大部分の人が治療を受けていませんが、高血圧を長期間放置していると、動脈硬化も進行します。一方、若年性の高血圧は食生活や生活習慣の見直しで改善の余地もあります。高血圧が疑われたら速やかに専門医に相談してみた方がいいと思われます。

 

 

高血圧と関連の深い病気

 

 

高血圧の関わる病気には、脳卒中や心疾患、あるいは慢性腎臓病などが挙げられます。

 

とりわけ、高血圧によって最もリスクが高まるのが、脳卒中です。脳卒中には脳梗塞脳出血くも膜下出血などがあり、いずれも高血圧は非常に重要ですが、とりわけ脳出血の原因の大部分は高血圧だと考えられています。収縮期血圧(最高血圧)が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが男性で約20%、女性で約15%高くなります。

なお、脳卒中の発症率がもっとも低いのは、収縮期血圧<120mmHgかつ拡張期血圧<80mmHgだと報告されています。従って、近年は血圧はできるだけ低めにコントロールするのが望ましいとされています。

 

高血圧は、心疾患のリスクも高めます。特に、男性の場合は影響が大きく、収縮期血圧が10mmHg高くなると、心筋梗塞や狭心症の危険度が約15%も増加します。

 

腎硬化症は、高血圧が原因で腎臓の血管に動脈硬化が生じ、腎臓の機能障害をもたらす疾患です。こうなると血液中のナトリウムなどの排泄がうまくいかず、さらに血圧が上昇する悪循環を起こしやすくなります。慢性腎臓病を起こすと、脳卒中や心筋梗塞による死亡率も高くなることがわかっています。

 

 

家庭での血圧測定について

 

家庭血圧の役割

 

 

家庭での血圧測定には、次のようなメリットと役割があります。
・時間を決めて毎日同じ条件で測定できるので、詳細な血圧の推移をを把握することが出来ます。

・安静時の血圧を測定することができるので、より正確に血圧を知ることが出来ます。

・血圧値を記録しておくことで、患者さん自身の健康管理の目安となり、健康意識が高まります。また、主治医にとっては重要な判断材料となります。

・病院での血圧測定では把握しにくい白衣高血圧仮面高血圧早朝高血圧(後述)を診断するのに有用です。

 

 

家庭血圧の測定方法

 

1.起床後と夜の2回測定を基本としましょう。

2.朝:起床後1時間以内(活動前)に測りましょう。排尿後、朝の服薬前、座った姿勢で1〜2分間安静にした後が理想的です。

3.晩:就床前などの安静時に測りましょう。座った姿勢で1〜2分間安静にした後にしましょう。
4.測定する位置は心臓の高さに近い方が良く、上腕部(上腕カフ血圧計による)での測定値が、最も安定しています。

5.可能であれば、参考のため日中の血圧変動も測定しましょう。

6.毎日測定するのが最良ですが、週数回でも継続することが大切です。

 

家庭血圧の基準

 

家庭での測定では、「収縮期血圧が135mmHg以上、かつ拡張期血圧が85mmHg以上」が高血圧の目安とされます。

 

 

様々なタイプの高血圧

 

モーニングサージ(早朝高血圧)

 

血圧は、夜間睡眠中に最も低くなり、早朝からは少しずつ上昇しはじめます。ところが早朝の血圧が急激に上昇するタイプの高血圧があります。これが「早朝高血圧」です。高齢者や血糖値・コレステロール値が高い人に多くみられます。脳卒中を起こすリスクが高いので注意が必要です。

服薬治療を受けている患者さんにも、早朝高血圧の方が少なくありません。原因の一つとして挙げられるのが、前日に降圧薬の効果が早朝には切れてしまうことです。この場合、薬の種類や服用時間などを変更する必要があります。 早朝高血圧の発見には、家庭での朝の血圧測定が大切です。

 

 

持続性高血圧

本来、一日の中でも最も血圧が低いはずの深夜にも血圧があまり下がらず、早朝も血圧がそのまま持続して高いタイプです。モーニングサージとの区別が重要です。血糖値が高い人、腎臓障害がある人、大いびきをかく人(睡眠時無呼吸症候群)などに多くみられます。睡眠中にも心臓や血管に負担がかかるため、心疾患を起こすリスクが高いので危険です。

 

 

白衣高血圧

 

病院で血圧を測定すると、血圧が高めになる方は案外少なくありません。医師や看護師の前で高血圧になることから、「白衣高血圧」と呼ばれています。血圧を意識しすぎたり、緊張したりするため血圧が高くなり、高齢者に多くみられます。日ごろの血圧がわからないため、医師が正確な診断を下しにくくなります。こうした場合にも家庭血圧が重要で、その記録を主治医にみせることで、白衣高血圧かどうかの判断に有用です。

 

 

仮面高血圧

 

病院での血圧測定では正常値なのに、家庭など病院以外での血圧が高いタイプの高血圧があります。高血圧であることがわかりにくいため、「仮面高血圧」と呼ばれます。

 

 

高血圧になりやすい要因

 

食塩摂取量が多い

 

日本人の高血圧の最大の原因とされるのが、食塩摂取の過剰摂取です。食塩をとると、血液中の塩分濃度が高くなります。すると濃度を調整するために、体内の水分が血液中に集まります。その結果、血液の量が増え、血圧が上昇します。「減塩」を謳った食品が店頭に並んでいますが、現実には日本人の1日の食塩摂取量は約10gにもなります。日本高血圧学会のガイドラインでは、1日当たりの塩分(食塩)摂取量の目標を「6g未満」と設定していて、より少なくすることが理想であるとされています。なお、カリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。マグネシウムは、その働きを助けます。

 

 

ストレス

 

ストレスを受けると、血圧が一時的に上昇します。これはストレスに対抗するための防御反応の1つで、いい意味での「緊張状態」です。しかし、ストレスが長期間にわたって続くと、慢性的な高血圧になりやすくなります。日本人には、ストレスに弱い思考回路・行動パターンのいわゆる「A型」人間が多く、高血圧になりやすいので注意が必要です。

 

 

運動不足

 

適度の運動には、高血圧を改善する効果があります。激しい運動でなく、ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動が適しています。運動の量としては1日30分以上、週に4日以上を心がけましょう。

 

 

大量飲酒

 

アルコールは、一時的には血流を良くし、血圧を下げる効果もみられます。しかし、飲みすぎると、反対に血圧を上げます。飲みすぎの状態が続くと、心疾患のリスクが急速に高くなります。一般的に健康の目安となるアルコールの量は、最大で約20g/日とされています。参考になる量としては、ビール中ビン1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、焼酎0.6合(110ml)、ワイン1/4本(180ml)程度になります。これを超えると健康や脳機能に悪影響を及ぼす可能性が高まります。

 

 

高血圧になりやすい体質

 

日本人の高血圧の方のうち約半数は、家系的にみて高血圧になりやすい体質であるといわれています。両親、兄弟、祖父母などの血縁に高血圧の人が複数いるようであれば、自分も高血圧になる可能性が高いと考え、普段から血圧に気を配るようにしましょう。

 

 

睡眠時無呼吸症候群

 

肥満や、脳の呼吸中枢の機能異常などが原因で、睡眠中に呼吸が何度も止まってしまう病態です。酸素が脳に届きにくい状態となるため、交感神経の活動が高まり、通常ならば夜間に下がるはずの血圧が逆に上がってしまいます。睡眠時無呼吸症候群は、夜間高血圧や早朝高血圧の原因の1つといわれています。更に、心不全などの循環器疾患や脳血管疾患などのリスクとなるため、適切な治療をすることが重要です。

 

 

内臓脂肪型肥満

 

内臓脂肪が増えると、インスリンの働きが悪くなります。すると膵臓から大量のインスリンが分泌されるようになりますが、インスリンには腎臓からの塩分(ナトリウム)の排泄を妨げる作用があります。その結果、血液中の塩分濃度が上昇し、高血圧になってしまいます。いわゆるメタボリックシンドロームとも深い関係があります。日本人の男性(比較的若い世代)に多くみられるのが、内臓脂肪型肥満を原因の1つとする高血圧です。

 

 

血圧と危険因子による心血管リスク心血管リスク

 

 

(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」より)

 

 

メタボリックシンドロームは、腹部肥満をベースにして、高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上の症状が一度に出ている状態を言います。メタボリックシンドロームになると、心臓の動脈(冠動脈)などの動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの心疾患を引き起こしやすくなります。